ブラジル新世代シーンのキーパーソンのひとり、ドメニコの実弟によるこのセカンド・アルバムは、ヒンヤリとしつつもまろやかで蕩けるような、緊張と弛緩が同居しているような、不思議な感覚を持つ実験的な音響系シンガー・ソングライター作品といった一枚に。音数は少なめだけど、エレクトリック・ギターやパーカッションほか、ひとつひとつの音すべてがいちいち緻密かつセンス良いので痺れます。
兄ドメニコ同様その音楽性は多彩でポスト・ロックやジャズ、アフリカンなんかも通過してるのだけど根底にはMPBらしさがある。そして〈ハイブリッド〉なカタカナ感でない、いい塩梅の弛さが気持ちよくアコギやシンセが交差、絡み合う中ポカポカと鳴るパーカッションが夢の世界へ誘う。自主制作ながらブラジル最大手の新聞の〈2016年ベスト〉にデヴィッド・ボウイ、レディオヘッド、ビヨンセ、アノーニなどと並んで選出されたというのが凄いチカーノ・バットマン『Cycles Of Existential Rhyme』のようなレイドバックしたとろける系やルーツ・レゲエ好きにもオススメしたい。