劇伴でZとパイルダー・オンした二代伝承の偉業集!

 FAB4全米制覇の1964年は10歳だった。「我々は忍者部隊だ!!」と侵入の背徳感を仲間内でひた隠し、旧・大田黒元雄邸に裏庭から忍び込んだのをよく憶えている。ザリガニ獲りを終えるまで終始、身内に響いていたのがサーフ・サウンド調の宙明節、“忍者部隊月光主題歌”の旋律だった。時は流れて1972年は高3で18歳、連赤の硝煙の記憶も生々しい3月に放映開始の「人造人間キカイダー」も、11月誕生の斬新アニメ「マジンガーZ」も観ない年頃になっていた。ミニモーグ導入/二六抜き音階炸裂の新生・宙明サウンドとの出遭いも取り逃がした次第だ。

渡辺俊幸 マジンガーZ / INFINITY ワーナー(2018)

 今回、新作映画「劇場版マジンガーZ / INFINITY」(1月13日公開)の鑑賞を前に、届いたばかりのOST特装盤を聴きながら、永井豪の原作漫画(文庫版全4巻)を読了した。今夏上梓の自伝語り本「作曲家 渡辺宙明」も面白く読んだ。

 つまり45年遅れのZ初心者にはこの上もない入門環境下で試写に臨んだわけだが、前掲の1CD(通常盤)+4CD(マジンガーZ音楽集)+2CD (グレートマジンガー音楽集)に、別冊ブックレット付きの7枚組BOXという特装盤の内容が質量共に凄い! 掻い摘んでいうと、水木一郎の新録オープニングテーマ(60秒)を含む通常盤が渡辺俊幸のペンによる新作版の劇中音楽集。あとの6枚が実父にして特撮音楽界の巨匠・渡辺宙明によるオリジナル主題歌/劇中歌/劇中音楽を、当時のアナログマスターテープからハイレゾリマスタリングして完全収録した文字通り、ファン垂涎の全貌集なのだ。たとえば、計3枚のオリジナルBGMアーカイブ編には「Z」放映期間中に4回録音された数多の音源集から、一部には技師の声も生々しく収録したものもある。主題歌・挿入歌の映像用短縮サイズやそのカラオケ、メロオケも時系列で構成され、どの曲からも〈血沸き肉躍るもの〉をめざし、Zの巨大さを描くためにブラスを効かせた宙明節の神髄が伝わる。

 一方、ハリウッド式の管弦楽法と映画向きの作曲技法を学んだ俊幸サウンドとの親子対比も興味ぶかく、視聴覚戦後史の一級資料となろう。

 


FILM INFORMATION

(C)永井豪/ダイナミック企画・MZ製作委員会

映画「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」
原作:永井豪
監督:志水淳児
音楽:渡辺俊幸
オープニングテーマ:水木一郎
声優:森久保祥太郎/茅野愛衣/上坂すみれ/花江夏樹  他
配給:東映(2017年 日本95分)
◎2018/1/13(土)全国ロードショー
www.mazinger-z.jp/