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ただのデス声はいらない

 すなわち今作は、彼ら自身にとっての名盤の意義を体現したものでもあるというわけだ。言うまでもなく、そうした充実の楽曲群をいっそう輝かせているのが、丹念に練り込まれたギター・メロディーと、さらなる進化を遂げた歌声。

 「スクリーム一辺倒だと、特にミディアム・チューンでは間が持たないと自分自身で感じていて。そこでKOUTAの助言も得ながらいままでよりも抑揚や緩急をつけ、〈歌〉に近付いていった。僕としてはスクリームと歌の境界線ギリギリを攻めたいという思いがあるし、それが自分にとってのロマンでもある」(DOUGEN)。

 「僕は〈歌〉が欲しいというわけではない。とはいえ、ただのデス声もいらない。前作あたりからDOUGENにはちょっと生声っぽいチャレンジをしてもらっていて、本人的には抵抗もあったようだけど、今回はその結果、彼自身も〈ええやん、最高やん〉と自画自賛できるところに落着できた。スクリームだけど表情豊か。この声はDOUGENにしか出せないものだと思う」(KOUTA)。

 THOUSAND EYESにいちばん相応しい声を見つけたDOUGENは、逆の立場からKOUTAを絶賛する。

 「圧倒的なギターだと思う。特にリードについてはパッと聴いただけで〈あ、コイツだ!〉とすぐにわかる。そこにKOUTAの刻印があるという感じ。アピアランスとかじゃなく、サウンドやプレイだけでそれをわからせてくれて、僕を含めた全員を黙らすことのできるギタリストは、世界広しと言えどもこのバンドの2人だけ」(DOUGEN)。

 そしてKOUTAは「ギター・ソロについては一音も妥協したくない」と言い切る。

 「例えばドの音からレの音に行く時、普通にそのまま弾くのか、スライドするのか、あるいはチョークアップするのか――考え得る選択肢をすべて試したうえで、最良だと思えるフレーズを構築し、最終的に録音する。そうやって自分なりにベストを尽くしたソロを入れたいんです。だから、よくある〈何度か即興的なソロを録っていちばん良かったテイクを採用〉みたいなことは一度もしたことがない」(KOUTA)。

 この会心作を携え、彼らは活動規模などの面においても飛躍をモノにしようと意欲満々の状態にある。ただ、KOUTAは「応援してくれる人たちの期待に応えたい気持ちは当然あるし、今後は従来より大きな場所でのライヴも増やしていきたい」と言いつつ、早くも新たな苦悩を抱えはじめているようだ。「これほど自信の持てる作品が出来た後、どうしたらいいんだろう? それが現在の悩みです」と話す彼。しかし、そうした発言を横で聞きながら、DOUGENは「僕はそのへん、意外にあっけらかんとしているんですけど」と笑う。この両雄、なかなかの名コンビじゃないか。   

 

THOUSAND EYESのアルバムを紹介。

 

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