コラム

パーケイ・コーツ(Parquet Courts)こそ〈フジロック〉の主役!? 新作『Wide Awake!』に久保憲司が迫る

Photo by Ebru Yildiz
 

NYはブルックリン発の4人組ロック・バンド、パーケイ・コーツが新作『Wide Awake!』をリリースした。2010年の結成以来、アルバムとしては5作目(EPやコラボレーション・アルバムなど、ほかに多数の作品がある)となる本作は、なんとあのデンジャー・マウスによるプロデュース。ローファイ、ポスト・パンク、ガレージ・パンクをごちゃ混ぜにしたような、やんちゃな持ち味はそのままに、よりダンサブルに、よりポップになっている。

そんなパーケイ・コーツの新作『Wide Awake!』について、カメラマン/ライターの久保憲司が筆を執った。〈FUJI ROCK FESTIVAL〉への出演も決定している彼らは、ワイヤーの再来か、はたまた〈第二のストロークス〉か。〈フジロック〉の陰の主役になるかもしれないバンドの本質に迫った。 *Mikiki編集部

PARQUET COURTS Wide Awake! Rough Trade/BEAT(2018)

パーケイ・コーツは2010年代のワイヤー?

まるで初期パンク~ポスト・パンクのワイヤーのようなバンド、パーケイ・コーツが僕は大好きだ。3枚目のアルバム『Sunbathing Animal』(2014年)をラフ・トレードからリリースして以降のパーケイ・コーツは、ワイヤーの歴史を辿っているようでおもしろい。

『Sunbathing Animal』は、80年に一度解散する前のワイヤーのようなアルバム。パンク時代を通過した良識ある音楽業界の人でワイヤーを尊敬していない人は一人もいないので、ラフトレがパーケイ・コーツと契約したのは当たり前のことなのだが、ラフトレ的には〈第二のストロークスになるんじゃないの?〉という狙いもあったと思う。

2014年作『Sunbathing Animal』収録曲“Sunbathing Animal”
 

次に彼らがリリースしたのがEP『Monastic Living』(2015年)。ワイヤーというバンドは解散した後に、ノイズ・バンドとポップなサイケ・チームに分かれるのですが、パーケイ・コーツがやったのはノイズのほう。爆笑です。ラフトレは、〈ワイヤーからストロークスになってくれたらいいのにな〉と思っていたはずなのに。それでもちゃんとリリースするのがラフトレの偉いところです。

『Monastic Living』は、ノイズだからと言ってバカにしないでくださいよね。力強い作品です。打ち込みやダンス・ミュージックが好きな人には、興味深いアイデアがたくさん詰まっています。

彼らは『Monastic Living』をリリースする前に、〈パーケイ・クオーツ(Parkay Quarts)〉という変名で『Content Nausea』というアルバムも発表しています。4トラックのカセット・レコーダーで録音されていて、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの3枚目『The Velvet Underground』(69年)のようにチープなんだけど、どこか温かい、NYパンクなアルバムです。

『Monastic Living』を出した後にリリースしたのが『Human Performance』(2016年)。またワイヤーの話になって申し訳ないのですが、〈ノイズ〉と〈ポップ〉に分裂していたワイヤーは、85年にまた一緒にやりだします。『Human Performance』はその時の感触を思い出すようなアルバムです。

『Sunbathing Animal』と同じようで、何かが違う。焼き鳥屋さんをやっていたのに、本屋さんをやって、その後また焼き鳥屋さんをまた始めたのだけど、初めにやっていた焼き鳥屋さんとは違うみたいな。意味わかりますか?

バンドのメンバーからは否定されると思うのですが、ワイヤーの歴史を辿ることで、自分たちのバンドが面白くなるだろうと作戦練っていたとしか思えない展開なのです。またワイヤーの話に戻ってしまいますが、いろいろあったワイヤーがいまどうなっているかというと、初期の頃のワイヤーの評価があまりにも高すぎるので、初期に戻っているんです。

2016年作『Human Performance』収録曲“Berlin Got Blurry”
 

 

〈第二のストロークス〉と呼ぶにふさわしい新作『Wide Awake!』

で、パーケイ・コーツの新作『Wide Awake!』がどういうアルバムか。ワイヤーのように初期に戻ったのかというと、これがそんなアルバムじゃないんです。これは、〈ポスト・パンクの玉手箱や!〉という感じの楽しいアルバムなのです。そして、〈パーケイ・コーツは天才だ!〉と言えるアルバムなのです。デンジャー・マウスのほうから〈プロデュースさせてくれ〉と言っているので、天才で間違いないと思います。

パーケイ・コーツは今作を出す前にイタリアのアーティスト、ダニエル・ルッピと『Milano』という80年代のミラノのフリークスたちの物語を語ったコンセプト・アルバムを作っています。ナールズ・バークレイの『St. Elsewhere』(2006年)で共演して以来、ルッピとデンジャー・マウスは繋がっていたので、パーケイ・コーツとデンジャー・マウスも繋がったのでしょう。ヤー・ヤー・ヤーズのカレン・Oも参加した『Milano』は良いアルバムですよ。しかし、みんな80sが好きですね。

ダニエル・ルッピ&パーケイ・コーツの2017年作『Milano』収録曲“Soul And Cigarette”
 

パーケイ・コーツの歴史を辿り、『Milano』を聴いて、彼らは只者じゃないと僕は気付いたのですが、『Wide Awake!』は目を覚まさせてくれたアルバムです。今作でのパーケイ・コーツもただの音楽オタクじゃないかのように、完全に目が覚めています。

1曲目“Total Football”はハネたベースがかっこいいパーティー・ソング。でも歌詞はすごく政治的。いまのアメリカの状況に対する怒り、そして、それとどう戦っていくかを歌にしてます。集団でやらないと勝てないぞ、でも個人プレイの自由さも大事だぞというメッセージには、そうだよねと思わせてくれます。

2曲目“Violence”はストラングラーズの“Nice 'N' Sleazy”なギター・リフがカッコいいと思っていたら、なんとフェラ・クティに影響されたアフリカンな曲なんだと。なるほどです。今回のアルバムがアメリカの現状に対する怒りが出ているからか、5曲目の“Almost Had To Start A Fight / In And Out Of Patience”は、ジャムの頃のポール・ウェラーを思い出させてくれたりします。

『Wide Awake!』収録曲“Almost Had To Start A Fight / In And Out Of Patience”
 

パーケイ・コーツの『Wide Awake!』は、70年代、80年代のあの時代の音楽の熱気が詰まったアルバムです。ベックや90sローファイのファン、2000年代のロックンロール/ポスト・パンク・リヴァイヴァル・バンドのファンにも訴えるサウンドですが、ノスタルジックなだけじゃない。これは未来を背負ったアルバム、ラフ・トレードが夢見た〈第二のストロークス〉と呼ぶにふさわしいアルバムなのです。

 

〈フジロック陰の主役はこいつらだ賞〉はパーケイ・コーツに

僕はパーケイ・コーツのライヴを、何年か前のグラストンベリー・フェスティヴァルで観ているんです。作品が好きだったので、すごく期待して観たのですが、そのときは〈英国のポスト・パンク好きのアメリカのバンド〉という印象しか残りませんでした。でも、こうして彼らの歴史を振り返るとそういうことだったのかと納得がいきます。なので、今年の〈FUJI ROCK FESTIVAL〉での来日には期待大です。

そして、いまのアメリカや世界に対する不満をブチまけた今作の怒りのリアルさを思えば、前回の〈フジロック〉(2014年)以上の盛り上がりを生むこと間違いありません。今回こそ、〈今年のフジロックの陰の主役はこいつらだ賞〉は彼らに決定でしょう。

2018年のスタジオ・ライヴ映像
 
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