コラム

内藤忠行とセシル・テイラー(Cecil Taylor)――ジャズの音、ジャズの映像

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 もうひとつ。

  ご記憶の方がおられるかどうか、このフリーマガジン「intoxicate」は、その前、「musée」という誌名で1996年の創刊である。この誌名のとき、2001年から内藤忠行の写真が表紙を飾っていた。記録としてのこしておくためにもシリーズ名も記しておこう(隔月で発行されているので年に6冊になる)。

 2001年11月20日発行から1年間〈ブルーロータス〉

 2002年11月20日発行から1年間〈日本の庭〉

 2003年11月20日発行から1年間〈アフリカ〉

 vol.50に至って「musée」の名と〈アフリカ〉シリーズが閉じ、vol.51から誌名が現「intoxicate」に。TOWER RECORDS店頭にならぶのが偶数月にもなって、2004年10月20日からは、新たなシリーズが始まる。しかも〈表紙の音楽〉という連載が組まれ、〈内藤忠行の写真からきこえてくる音楽〉をいろいろな人たちが文章にするというページもつくられた。花をさまざまなかたちにアレンジした写真をもとに、貞奴、藤原大輔、坂田学、DJ KRUSH、アン・サリー、渡邊琢磨が執筆。こちらも1年つづいた。計4年である。

 ふりかえってみれば、本誌の表紙を内藤忠行の写真が飾ったのはじつに18号、4年にもなる(もちろん単発でほかにもいくつかはある)。

 内藤忠行は3月にオリンパスギャラリーで〈ある写真家の花見〉を開催。ちょうどこの原稿を書いているときには帝国ホテルでの写真展の準備にかかっているはずで、10月には日本の庭の展覧会も予定されているときく。この列島の庭には、具体的な音とはまた異なった、視覚的な、いや、むしろ触覚的な振動がある。それはたとえば桜の風や空気の振動とはまたべつのもの。内藤忠行は具体的に体感する世界のさまざまな振動を、聴覚に、触覚に、嗅覚に、味覚にインプットされるものを写真/視覚的な媒体によってリ-プリゼントする。

 シマウマたちの輪郭が融解しひとつのかたちになる。全体が顔のようにもみえてくる桜の木。幹や枝が黒い骨としてあらわれるまわりに満開に咲き、散る、桜の花が鏡面のように、プリズムのように、ロールシャッハ・テストのようにあらわれる。花と枝はたゆたい、ときにはレース織りのように、蜘蛛のように、アラビアの文様のように、水鏡に映ったことどものように。上半身はだかでちょっとかたむいた姿勢でサックスを持つナベサダの笑顔。全身から湯気が、アウラがたちのぼってくるマイルス。一切を拒みつつ、音をたちあげてゆくセシル・テイラーの孤高。

 はじめて内藤忠行という写真家の顔を知ることになったのは「バリ島 不思議の王国を行く」(大竹昭子/内藤忠行、新潮文庫)だった。バリ島の日常のなか、本を構成するさまざまな要素のなかでひびいてくる振動から、この数日、写真家の〈作品〉をあらためておもいだし、わたしなりの(またべつの)ひびきをききとろうとしている。

 


セシル・テイラー(Cecil Taylor)[1929-2018]
米NYクィーンズ出身のジャズ・ピアニスト/詩人。本名はセシル・パーシヴァル・テイラー。6歳よりピアノを始め、50年にスティーヴ・レイシーらとカルテットを結成し活動を開始。56年にファースト・アルバム『ジャズ・アドヴァンス』を発表。従来のジャズの枠組みに捉われない〈フリー・ジャズ〉の先駆者としてムーヴメントを牽引。以降、ソロ、トリオ、ビッグバンドなど多彩な編成で活動を継続。来日公演も多く、日本のジャズ界にも影響を与えた。2013年には稲盛財団の京都賞・思想・芸術部門を受賞。2018年4月に自宅で死亡。89歳没。

 


内藤忠行(Tadayuki Naito)[1941-]
東京・浅草生まれ。1964年よりマイルス・デイヴィスなどジャスの巨人を撮り始める。独自の視点でアジア、アメリカ、アフリカなど世界規模の取材を行った膨大な写真は、映像、造形、テキスタイルなどに発展。桜や蓮など植物や自然をテーマにした作品も手掛ける。主な著作に「アフリカの旅」「ZEBRA」「Blue Lotus」「SAKURA」など。

 


寄稿者プロフィール
小沼純一(Jun’ ichi Konuma)

校正は積みあがっているのにちゃんとむきあう心身の余裕と時間がなく、横目で眺めているばかり……の近況でやんす。

 


EXHIBITION INFORMATION
内藤忠行 写真展 “青い蓮の音”

会期:6/12(火)-7/1(日)
開館時間:11:00-19:00 会期中無休
会場:愛でるギャラリー祝
〒100−0011
東京都千代田区内幸町1-1-1 帝国ホテルプラザ東京2F
medelgalleryshu.com

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