守屋純子のジャズは、時代と地域を反映し、世界に向けて雄弁に語る。

 ピアニスト/ビッグバンド・リーダーの守屋純子が3年ぶりの新作『Art In Motion』をリリースした。前作『Play For Peace』では、愛知県岡崎市の委託で作曲した《徳川家康公ジャズ組曲》をフィーチャーしたが、本作では守屋とモントレー ジャズ フェスティバル イン 能登を通じて所縁が深い石川県七尾市へオマージュして、同地出身の安土桃山時代から江戸時代初期に活躍した絵師、長谷川等伯の代表作をモチーフに《長谷川等伯ジャズ組曲》を制作した。また昨年のジャズの録音から100周年を記念して、守屋に大きな影響を与えた4人のジャズ・ジャイアンツに捧げた《Tribute To Four Jazz Giants》も併せて収録された野心作である。守屋のアルバム・デビューから20周年、ビッグバンド作品では6作目という記念作だ。

守屋純子オーケストラ アート・イン・モーション Spice of Life(2018)

 《長谷川等伯ジャズ組曲》の作曲にあたり守屋は、絵から受ける印象に加えて、等伯がそれらの作品を制作した当時の時代背景、その絵に込めた心情まで深くリサーチして、曲に反映させた。

 「その過程で、明治時代に『青邱遺稿』を著して等伯の再評価を決定づけた奈良帝室博物館学芸委員で、美術鑑定家の片野四郎が、私の曽祖父だと知り、宿縁を感じた」と語る。徳川家康、長谷川等伯と日本の歴史、文化をモチーフにしたジャズ組曲の挑む守屋は、「様々な文化や、アート、クラシック音楽をもジャズ組曲化したデューク・エリントン(p)からの影響がある。また1990年から93年まで、マンハッタン音楽院の修士課程に留学した体験が大きい。文化の最先端のニューヨークに身を置き音楽的研鑽を積みながら、日本と日本の文化、自らのアイデンティティを客観的に見つめることができた」と振り返った。SNS隆盛の時代に入り、守屋の作品は、国内外のプロフェッショナル、アマチュアが多く取り上げているという。また守屋がロシアや香港に赴き、現地アーティスを指揮することもある。

 「ジャズとは、時代と地域を反映して完成する。国内のプレイヤーの皆さんは、私と同じ地域、時代を生きていることで共感をいただいていると思う。海外のプレイヤーは日本文化に興味を持ち、共通言語であるジャズで日本文化を描いていることから、チャレンジしてみようと思われているようだ。オリジナリティのないグローバリゼーションは成立しないと思う」と守屋は断言する。かつて秋吉敏子(p)がジャズで日本文化を描き、アメリカで高い評価を得た。守屋純子は現代の方法論で、次なる扉を開け放とうとしている。

 


LIVE INFORMATION

守屋純子オーケストラ公演
○9/15(土)第15回さいたま新都心ジャズデイ
○2019年2/22(金)渋谷さくらホール

守屋純子カルテット
○11/16(金)千葉県山武市 成東文化会館

守屋純子オクテット
○11/22(木)浦安音楽ホール

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