小説家、大江健三郎と批評家、柄谷行人の、20年の時を超え“現在”を透かす対談集(94-96年)。かつてはグローバリズム、現在はAIによる世界の標準化が進み、文化の質は大きく変わりつつある。それがおそらく、彼らの語る 「細部」の喪失によってもたらされる、いつでもどこでも交換、変換可能な言語の発症と感染によるものだと気づかされた。利便性が削ぐ「細部」は言葉や、言語そのものを侵食してきたのだから、我々の思考や、詩的態度を随分と変化させただろう。現実の歪みを矯正する言葉を生むことではない、わけがわからない方向へ想像を導く言葉を紡ぐこと、ホズレによって飛躍する思考が必要だと、気づかされた。