オーストラリアから世界へ、歌って踊れる才色兼備DJのファースト・アルバム
「DJとシンガーの両方で活動することで相乗効果が生まれてると思う。プロデュースを自分でするDJも多いでしょ? 自分で曲を書いたり。私もDJを始めるずっと前からプロデューサーと曲を書いてたわ。だからDJを始めて、2〜3年経って、やっぱりまたスタジオに入って自分の音楽が作りたくなったの。それでいまの私がいるのよ」。
地元のオーストラリアを拠点にDJとして名を馳せた後、ピットブルを迎えたシンガー・デビュー曲“We Run The Night”の大ヒットにより、一人のアーティストとしても成功を収めたハヴァナ・ブラウン。アイコニックな容貌に、EDM以降のアーバン・ポップの流れを踏まえたダンサブルなサウンド、適度に匿名性もあるヴォーカル。冒頭の発言でも仄めかしている通り、そもそも前歴のある人だけにステージのフロントに立つ欲求は常に頭を離れなかったに相違ないが、とはいえ彼女にとってのDJイングは表舞台に辿り着くための手段に過ぎなかった……というわけではない。
「朝食を食べながらラップトップを開いて、すぐ新しい音楽を探すことが毎日のルーティーンなの(笑)。DJの仕事をする前から好きでそうしていたし、音楽というものがどういう方向に向かっていくのかを考えながら新しい音楽をリサーチするのが大好き」とも語っているように、もともと俯瞰的にシーンの流れを掴むのに長けていた彼女にとって、いまの〈歌って踊れるDJ〉というスタンスは心地良い天職なのだろう。過去のプレイリストなどを見れば、いわゆるTOP40ヒッツ的なセットに旬のEDMやユーロダンスを織り交ぜ、クラシックなR&Bやヒップホップも効果的に織り込んでいる。そんな彼女にとっての憧れは、2009年に急逝したDJ AMなのだという。
「何事も恐れずにいろんなことにチャレンジする、彼のDJスタイルが大好きだった。DJとして自信を持って、好きなものにチャレンジするということを私に教えてくれたわ。いろんな人を驚かせるのが大好きで、R&B、ハウス、テクノなどいろんな曲をかけながら突然クラシックを入れてみたりなんかして、凄く影響を受けた」。
その思うままに楽しさを追求する自由なDJ精神は、「私はクラブのために音楽を作ってる」という発言そのままのキャッチーな楽曲群として、ハヴァナ自身のファースト・アルバム『Flashing Lights』で具現化されている。そのアッパーな楽しさを援護するのは、“We Run The Night”を手掛けたレッドワンら、世界トップクラスのクリエイター陣だ。
「レッドワンが〈自分との仕事に興味があるか〉と訊いてくれた時、すぐに快諾したわ。だって、彼の作品の大ファンだったし、光栄だったわ。彼って本当にエネルギッシュで、ポジティヴで、仕事に対して一生懸命なの。そんなハイ・スタンダードな人に認められただけでも幸せ(笑)」。
HAVANA BROWN 『Flashing Lights』 2101/Island Australia/ユニバーサル(2014)
レッドワンはリハブと共同で“You'll Be Mine”もプロデュース。そのリハブやアフロジャック&DJブッダといった現行ダンス・シーンの大物をはじめ、シェールの『Closer To The Truth』も記憶に新しいカール・ライデンなど、周到な人選によるハイ・スタンダードなトラックが並び、そのほとんどをハヴァナが共同でソングライトしている。また、レッドワンによる表題曲はオールド・スクールなディスコ調だったり、ロドニー・ジャーキンスの手掛けた“No Tomorrow”がユーロ作法のドラムンベースだったり、DJセットに彩りをもたらすが如く曲調も(恐らくは見た目のイメージ以上に)さまざまだ。
「ハヴァナ・ブラウンというのは、とても珍しい猫の品種なの。私がDJを始めた頃はまだ女性のDJは珍しかったし、グリーンの瞳でブラウンの肌だからピッタリだと思ったのよ」。
猫の目のようにくるくる変わる表情を駆使しながら、この先も彼女は多面的な魅力を発揮してくれるに違いない。
PROFILE/HAVANA BROWN
オーストラリアはメルボルン出身のDJ/シンガー/ダンサー。85年生まれ。フィッシュボウルというグループで活動するも、解散後にDJに転身。地元を中心にクラブ・プレイで経験を積んでいく。2008年にDJとしてユニバーサル・オーストラリアと契約。同年のミックスCD『Crave』が全豪9位のヒットを記録する。リアーナやブリトニー・スピアーズらの豪州ツアーに帯同する一方、2011年に“We Run The Night”で歌手デビューし、全米ダンス・チャートで首位を獲得。並行してSPICY CHOCOLATEらとのコラボでも話題を集めていく。2013年にファースト・アルバム『Flashing Lights』(2101/Island Australia/ユニバーサル)を発表し、このたびその日本盤がリリースされたばかり。