さまざまな観点から分析を試みる。例えば一曲、一編の小説について。この本では、数本のブラジル映画について史的、政治的、文化的分析がなされる。著者は、制作者、出演者、当時の批評など、作品の内側へも外側にも、分析の視線を走らせる。一本の映画が意図的に、あるいは不用意に取り込み、作品に表象したこと、あるいは表象しなかったことについて考察を重ねる。一本の映画の意図的表象を分析しその表現を再構成すると映画に眠る無意識が映し出される。この本では、ブラジルの、南米大陸では唯一ポルトガル語が公用語というガラパゴスのように孤立した領域が映画史の中に映し出される。