TOKYO FMで毎週金曜の27~29時に放送中の番組「RADIO DRAGON-NEXT-」。モデルやブランド・ディレクター/デザイナーなどマルチに活躍し、音楽への造詣も深いことで知られる菅野結以がパーソナリティーを務める同番組は、〈すべての音楽の登竜門〉をコンセプトに2010年にスタート。以降リニューアルをしながらも独自の視点で主に国内のフレッシュな音楽を紹介し続けきた人気番組だ。

その番組内のコーナー〈Monthly Disc〉で今月11月の顔となっているのが、昨年惜しまれながら解散したロック・バンド、plentyの元ヴォ―カリスト/ギタリストである江沼郁弥。江沼は今週11月7日(水)にファースト・ソロ・アルバム『#1』を発表したばかりで、〈Monthly Disc〉では同作の話を軸としたトークが毎週繰り広げられる。

Mikikiでは、コーナーで放送された江沼のトークの完全版をテキストにて独占公開中! 毎週放送終了後に公開しており、オンエアされたトークはもちろん、泣く泣くカットされた発言もすべて公開していくので、ラジオと共に毎週必ずチェックしてほしい。では、11月9日に放送された第2週目のトークをどうぞお楽しみください! *Mikiki編集部

Monthly Disc:江沼郁弥(第2回/11月9日放送分)

TOKYO FM「RADIO DRAGON-NEXT-」をお聞きのみなさん、菅野結以さん。こんばんは、江沼郁弥です。

今週11月7日にファースト・フル・アルバム『#1』をリリースしました。これは初めてのソロ作品なんですけども、今回は作詞作曲、アレンジ、楽器の演奏、リズムなどの打ち込み、あとエンジニアリングなど、ほぼ一人でやらせていただきました。

 

――すべて自身の手で作品を作ってみてどうだった?

もともとそういう作業自体は好きだったし、やってるときは夢中だったというか。こんなふうに〈やりきった〉と思って(作品が)外に出ていくってのはいままでなかったので、すごく達成感がありました。終わってみて、まずはそんなことを思いましたね。

聴き手への意識……それを意識してないと言ったら嘘になるし、かと言ってすごく意識してるかというとそれもどうかな?と思うし。それはつねにバランスをとっていた気がしますね。すごくパーソナルな作品になるのもどうなんだろうって思っちゃうし……。自分の場合はバンドをやっていたこともあって、今作はバンドのストーリーとはまた別の、個人の作品だから。あまりそういうものまで回収しようと思うと、自分がやりたかったことから離れていく気もして。そういった意味ではあまり考えないようにしてたかなと思います。

でも、聴き心地としてはもちろん気持ち良くて。当然作品を世に出すということで、喜ばせたい、驚かせたい、感動させたい、という気持ちはもちろん持って作ったんです。……うん、バランスをとりながらやっていったという感じです。

 

――楽器はどんなふうに選んだ?

ここ(手元の資料)に〈パイプオルガンが入った曲〉って書いてあるんですけど、あれはパイプオルガンじゃなくて実はギターの音なんですよ。ソロとしてライヴはまだ一回しかしてないんですけど、そのときにあがってたライヴ・レポート記事でも〈パイプオルガン〉って書いてあって。あれはそういうエフェクトをかけて自分で弾いたギターの音だったんですよね(笑)。作品でもライヴでも、音のいろんな部分に細かーい工夫をしているので、今作はそういう楽しみ方もあるかなと。

 

――バンドで音楽を作っていたときとの違い

僕の中では丸っきり違いますね。バンドはバンドでいいところも楽しいところもいっぱいあるんですけど、(今回は)人に託すところがほぼないので、自分のイメージ通りにコントロールできるというか。僕はもともとコントロール・フリークなんですよね。作曲してる段階で〈こうしてほしい〉とか〈こういう音像がいい〉とか、そういったイメージがあるので、あとはそれを鳴らすだけというか。まあ作業としてはすごくシンプルなぶん、納得いかないと誰のせいにもできないですけど(笑)。

でも、自分にはこういう作り方が合ってるんだなってすごく思いました。もちろんライヴでは人の力を借りないといけないんですけど。とは言え、ライヴのスタイルもどんどん変化させていきたいなと思っていて。一度やったときは僕含め3人でやったんですけど、今後は一人でやることもあるかもしれないし、やらないこともあるかもしれないし(笑)。

一人って自由で、その分責任があるんですね。もちろん前も責任はあったんですけど、今のやり方では自分で責任をとるしかないというか。……〈責任〉なんていうとつまんないですね(笑)。まあ、一人でやるっていうのは納得いくまでやれるってことだから、すごくいいと思ってます。やれるまでやって、満足いかなかったら(作品を)出さないっていう。

江沼郁弥 #1 1994 Co.Ltd.(2018)

そんな納得のいったアルバムから、“flash back”に続いてもう一曲、“soul”をお届けしたいんですけど、これもある種意思表明した曲なのかなと。サウンドも僕としては気に入っていて、声の加工とかいいですよね(笑)。ソロになってからはヴォーカルのエフェクトを多用してるんですけど、けっこう気に入ってるんです。すごい(声が)低い人いる、みたいな。

今回、コーラスは何人もいるんですけど、自分の地声と高い人、低い人の声が聴こえるのが二面性というか……自分の中にある〈正義と悪〉というか。そういうのも表現したいとずっと思ってたんですよね。それがこういったエフェクト加工に繋がっていったというか。サウンドとしてのおもしろさを追求する中で生まれたってのはあるんですが。

今ハッと思い出したんですけど、“soul”で〈スロウダウン、スロウダウン〉と言っている元ネタというか。僕、初めてNYに行ったときに、地下鉄でアコギを弾きながら〈Slow Down、Slow Down〉って歌ってるおじいちゃんがいたんですよ。そこから来てるんです、すごくいいなと思って。もちろん言葉の意味としても……別にこれまで突っ走ってきたっていうのでもないんですけど、でもソロになって、ゆっくり自分を確かめながら進んでいたい、いろんなものに流されずにやっていきたいっていう想いがあって。それで〈スロウダウン、スロウダウン〉って言ってるんだと思います。

この〈soul〉というタイトルにも意味があるかと言われると、たぶんなくて。僕、パソコンで音楽作ってるんですけど、あまり意味深な仮タイトルをつけちゃうとそっちに引っ張られてしまって作業が滞ってしまうことが以前から多いんです。なので、なるべく意味のないタイトルをつけるようにしてて……最終的には使えないような。でも“soul”はたしか初めからこれで、引っ張られたわけでもないと思うけど、最後まで変わらなかったんですよね。この曲を作ってるときにはアルバムを出す予定はあったんだったかな? でも、ずっと一曲目だな、この曲からライヴを始めたいなっていうのはあった。そういう頭ではずっと作ってたのかなあ。……ということで、また来週! 江沼でした。

 


★本トークはコチラから、オンエア日より1週間聴くことができます★

TOKYO FM「RADIO DRAGON-NEXT-」は毎週金曜日27時~29時に放送中。
※TS ONE(全国聴取可)にて毎週土曜日20時~22時で再放送有り。
https://www.tfm.co.jp/dragon/

 


Profile:江沼郁弥(エヌマ フミヤ
88年9月24日生まれ、茨城出身のシンガー・ソングライター。2004年に地元の同級生と共にロック・バンド、plentyを結成し、ヴォーカル/ギターを担当。2008年に上京、翌年にミニ・アルバム『拝啓。皆さま』でCDデビュー。2017年9月の日比谷野外大音楽堂公演をもって解散。翌2018年9月よりソロ活動を開始し、限定盤EP『Prototype EP』を発表。2018年11月7日にファースト・アルバム『#1』をリリース。

〈LIVE #1”〉
2019年1月15日(火)愛知・名古屋CLUB QUATTRO
2019年1月16日(水)大阪・梅田CLUB QUATTRO
2019年1月23日(水)東京・渋谷WWW X
2019年1月24日(木)東京・渋谷WWW X
★ライヴ情報の詳細はこちら