フロントマンを共有する2組が同時にメジャー・デビューを果たすという例は珍しいだろうが、フロントマンがいくつかのユニットで方向性の異なる表現を行うケースはずいぶんある。4月にリリースを控えるものだけでも、DIR EN GREYの京が立ち上げたsukekiyoや、奇妙礼太郎の新たなプロジェクト・天才バンドの初アルバム、killing Boyとしても活動する木下理樹が先導するART-SCHOOLの新作などがあるが、ここではゲスの極み乙女。とindigo la Endとの立ち位置に近そうな作品を紹介しよう。
まずはcp=威文橋という関係のgroup_inouとuri gagarn。目に映る光景をシニカルに見つめ、ユーモアを持って毒づくラップ・ミュージックである前者と、ローファイなオルタナ・ロックのスタイルでマイペースに活動する後者は、〈ヒップホップ・プログレ・バンド〉を標榜するゲスと端正なギター・ロックを鳴らし続けてきたindigoの振れ幅と重なる部分が。
また、共に福田哲丸が所属する〈ヒップホップ・バンド〉、カタコトと、みずからの音楽性を〈ショート・ハード・ロック〉となぞらえる快速東京にも同じような側面を見い出すことができるかも。いずれもサウンド的には袂を分けつつ、一方で中心人物のキャラクターがはっきりと両方に表出している点が興味深いところだ。 *土田
▼関連作品
左から、group_inouの2012年作『DAY』(GAL)、カタコトの2014年作『HISTORY OF K.T.』(Pヴァイン)、uri gagarnの2013年作『my favorite skin』(aLPs)、快速東京の2014年作『ウィーアーザワールド』(felicity)
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さまざまなキーワードからピックアップした、ゲスの極み乙女。とリンクしそうなアーティストたち
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ピアノを中心に据えた、ジャズやクラシックを横断する端正なポップスが基本ながらも、バックのアレンジは相当にプログレッシヴ。本作では石橋の歌唱に演劇要素が加わり、両者の距離はより接近したと言えるだろう。 *金子
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幅広いバックグラウンドを持つ才能溢れるソングライターが率い、ロック・バンドの形態でメインストリームに攻め込もうとするその姿勢、さらにはポップ・アイコン的な立ち位置もゲスに近い。 *金子
今年スプリット・ツアーを行った盟友とも言うべき存在。共にキャラ設定へのこだわりが強く、『踊れないなら、ゲスになってしまえよ』と本作における教室を舞台にしたヴィジュアルは、両バンドのリンクを示していた。 *金子
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ピアノのリフレインを軸にしたダンサブルなロックを鳴らす彼らは、同時期にメジャー移籍するバンドのなかでも、もっとも近い位置にいると言える。川谷が目標だと公言するクラムボンのミトがプロデュース。 *金子
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キャッチーな4つ打ちを鳴らす若手バンドは数ある昨今だが、〈the band apart以降〉の系譜に連なるミクスチャー感覚によって、頭ひとつ抜けた存在感を発揮。彼らもまた、J-Popを背景にして生まれた世代の代表だ。 *金子
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一見アヴァンな佇まいながら、高いアレンジ力とポップセンスでJ-Popのど真ん中に斬り込む姿がゲスと重なる? 初期は〈西のクラムボン〉と標榜していたが、理想のバンド像も似ているのかも。 *土田
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ポスト・ロック以降の繊細かつ大胆なアンサンブルによって、シネマティックなサウンドスケープを立ち上がらせる。その映像喚起力の高さに加え、作品のアクセントとして必ずモノローグが挿入されることもindigoとリンク。 *金子
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indigoと同様、〈エヴァーグリーン〉という言葉がぴったりの普遍的な美しさを湛えたメロディーが持ち味。切ないながらも清々しく、甘酸っぱさも同居した世界観は、まるで青春映画や恋愛小説のよう。 *金子
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〈ゲス〉とは対極の〈ノーブル〉な雰囲気があるという意味では、この門田匡陽のソロ・プロジェクトがいちばん近い? 門田は今年BURGER NUDSを復活させたので、バンドの掛け持ちという共通点も加わった。 *金子
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電子音も交えた繊細なギター・サウンドに乗せて、川谷と同じく〈喪失感〉を表現し続ける音楽家。新進シンガー・ソングライターのキクチリョウタを歌い手に迎えた本作は、その素朴な声が柔らかな詩情を増幅している。 *土田
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スタイルとしてはシンプルなギター・ロック。だが、だからこそ丁寧に磨き抜かれたソングライティングとサウンド・プロダクションが際立っている。〈生きること〉を綴ったナイーヴな詞世界には、普遍的な青さが。 *土田
ポスト・ロックを通過した音響処理とアンサンブルで視覚的なサウンドを構築する、という方向性をストイックに追求し続けるバンドの代表格。彼らはより哲学的な言葉で、箱庭的な音世界を構築する。 *土田