ほとんど商業録音を行わなかったアメリカの知られざるピアニスト、シドニー・フォスター(1917~1977)のアンソロジーが突如登場した。バルビローリ、アブラヴァネル、コープランドといった共演指揮者の顔ぶれを見てわかる通り、珠玉のタッチと柔軟なテクニック、リリックな音楽性をもった実力者である。来日経験もあり、62年ライヴの奥田道昭&日本フィルと共演したシューマン協奏曲の情感豊かな名演も収録されている。清水の流れのようなバッハから、鋭い色彩が弾けるようなバルトークまで、幅広い曲目収録により彼の芸術を振り返ることができる。アメリカ音楽界の驚くべき層の厚さを改めて実感する一組だ。