スポーツの一瞬の輝きを永遠の記憶にしてくれる音楽の存在感

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会がいよいよ来年に迫り、今年9月にはラグビーのワールドカップが日本で開幕する。そんなスポーツ気運が高まるなか、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の特別演奏会として『音楽とスポーツの幸せな関係』と題されたユニークなコンサートが開催される。

 音楽とスポーツが切っても切れない関係にあることは、フィギュアスケートやアーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)といった、音楽なしには成立しない競技を考えると明らかだろう。このコンサートでも、そうした選手たちの姿が鮮やかによみがえる名曲がたっぷり演奏される。

 フィギュアスケートの使用曲からは、浅田真央選手のトレードマークとも言えるハチャトゥリアンの《仮面舞踏会》より「ワルツ」や、ガーシュウィンの《アイ・ガット・リズム》。また、鈴木明子選手がソチオリンピックで使用した《愛の賛歌》は、人気作編曲家の平沼有梨が編曲を手がけたもの。このコンサートでは、現役で活躍する日本人作曲家の作品を軸にプログラムが組まれており、《愛の賛歌》のほかにも平沼の作曲による《PARALLEL》《Eternal》、そしてこの日のために委嘱された新作が初演される。

 一方、アーティスティックスイミングでは多くの場合、演じられるテーマに沿ってオリジナルの曲が作られている。この競技音楽を長年にわたって手がけ、日本の選手たちの躍進に大きく貢献してきたのが作曲家の大沢みずほ。日本ならではの文化を題材にとった曲も多く、個性的で躍動感あふれる作品をオーケストラの生演奏で聴くことができるこのコンサートは、エキサイティングな体験となるに違いない。

 ほかにも、1964年の東京オリンピック開会式のために公募で選出された今井光也による《東京オリンピックファンファーレ》、オネゲルによる3つの《交響的運動》の第2番「ラグビー」、ホルストによる《惑星》の第4曲「木星」をもとに作られたラグビーワールドカップのテーマ曲《ワールド・イン・ユニオン》など、スポーツを共通項とした色とりどりの曲たちが並ぶ。

 演奏陣も豪華で、オーケストラと合唱に加え、作曲の平沼がピアノで出演するほか、能楽師、篳篥や笙の奏者の名前も。さらにはスペシャル・ゲストとして有名ヴァイオリニストの出演も予定されているとのこと。とにかく間口を広く、さまざまな引き出しを用意して普段はコンサートに来ない客層を取り込みつつ、なかなか生演奏で聴くことができない曲でクラシック・ファンの心もくすぐるコンサート。ぜひスポーツ好きのご家族、友人を誘って足を運んでいただきたい。

 


LIVE INFORMATION

音楽とスポーツの幸せな関係
現代におけるオーケストラの魅力と創造の旅路

○8/31(土)14:30開演
【会場】横浜みなとみらいホール
【出演】阿部未来(指揮)平沼有梨(作曲・p)大沢みずほ(作曲)
観世流能楽師シテ方:中森寛太 中村仁美(篳篥)中村華子(笙)
スペシャルゲスト(vn)神奈川フィル合唱団(合唱)
【曲目】オネゲル:交響的運動「ラグビー」
ホルスト(大橋晃一編):ワールド・イン・ユニオン(惑星より『木星』)
ワルトトイフェル:スケーターズ・ワルツ
今井光也:東京オリンピックファンファーレ
ハチャトゥリアン:組曲「仮面舞踏会」より“ワルツ”
ガーシュウィン:アイ・ガット・リズム
モノー(平沼有梨編曲):愛の賛歌(ソチ五輪鈴木明子Ver)
エルガー:威風堂々第1番
平沼有梨:PARALLEL/委嘱新作/Eternal
大沢みずほ/大沢みずほさんが作曲した夏季オリンピックの競技
音楽をオーケストラの生演奏でお届けします。
www.kanaphil.or.jp/concert/1113/