煌びやかなEDMサウンドとギター、ヴァイオリン、ベースの生々しい響きが絡み合うトラック、そして、鋭利で透明感のあるヴォーカルの描き出すドラマティックな旋律が心と身体を踊らせる。ADM(アコースティック・ダンス・ミュージック)の潮流を独創的なポップネスへと結びつけた音楽性により、確実に注目度を上げているバンド、それがレルエだ。ルーツとなるバンドとしてトゥー・ドア・シネマ・クラブ、ロイヤル・コンセプト、クラクソンズなどを挙げ、同時代のダンス・ミュージックにも興味を持っていたという3人は、その影響を独自のスタイルに昇華すべく試行錯誤を繰り返してきた。その最初の成果と言えるのが、昨年発表された“夜はモーション”。EDMの昂揚感と生楽器の有機的な音色、中毒性のある旋律がひとつになったこの曲は、現在のレルエの軸になっているという。
「結成から2年くらいはもっとマニアックな音楽性を突き詰めていて。それをどうポップに昇華するか?……という時期のなかで出来たのがこの曲なんです」(櫻井健太郎)。
「EDM、ギター、ヴァイオリンのバランスもそうだし、スタイリッシュに表現できた曲かなと。MVの再生数もいきなり増えたし、自分たちのことを知ってもらえるきっかけになった曲ですね」(saya)。
「もともと櫻井の作るメロディーはポップだったし、それを打ち出せたのかなと」(エンドウリョウ)。
そしてこのたび、初のフル・アルバム『Alice』をリリース。先述の“夜はモーション”も収めた本作は、〈EDM×生楽器〉というスタイルを進化させると同時に、バンドの備えた引き出しの多さを示した作品になっている。
「去年出したミニ・アルバム『UNITE』の曲を中心にしながら、ジャンルの幅を広げたくて。タイトルの『Alice』は、不思議な異世界に引き込んでいろんな音楽と出会う、というイメージで付けました」(櫻井)。
「いままで以上にポップスに寄せて、多くのリスナーに聴いてもらうことを意識して作った」(櫻井)という“時鳴りの街”、生楽器主体のアレンジを取り入れて「EDMだけじゃなくて、こういう曲もあるということを示したかった」(saya)という意図を込めた“プレイアデス”。さらに独特なコード進行とギター・フレーズを軸にした“硝子の国”、フロアをガッツリ揺らすダンス・トラック“UP TO DATE”、濃密なグルーヴが渦巻く“ホリデーバード”など、個性豊かな楽曲を収録。本作の制作を通して、メンバー自身もこのバンドの新たな可能性に気付いたようだ。
「自分たちも飽きやすいし(笑)、同じような曲ばかりだと、聴いているほうもつまらないと思うんですよ。そのためにもいろいろなヴァリエーションがあったほうがいいなと」(saya)。
「今回のアルバムにもいろんなテイストの曲が入っていますが、まだまだ幅は広げられる、と思っていて。これを踏まえて、次は何ができるか考えていきたいし、そういう意味では通過点でしょうね」(エンドウ)。
また、「曲はイントロから作ることが多い」「いい曲かどうかは、始まった瞬間にわかる」「歌詞は頭のなかで思い描いているものをスケッチするように書く」という価値観に裏打ちされた櫻井の創作スタイルも、このバンドのオリジナリティーと強く結び付いている。優れたポップネスと多彩な表現を併せ持ったレルエの音楽世界はこれからさらに広がっていくはずだ。
「ライヴのやり方も変わってきていて。以前は、集中して聴いてもらえればいい、という感じだったんですが、1年くらい前から、こちらから近づいて一緒にライヴを作ることが大事、と思うようになったので」(saya)。
「次の展開は、アルバムを聴いてくれた人たちのレスポンスを受けてから決めたいと思っています。自分たちがやりたいこともあるけど、それだけをやるのは違うし、リスナーがいないと成立しないですからね」(櫻井)。
レルエ
櫻井健太郎(ヴォーカル/ギター)、エンドウリョウ(ベース)、saya(ヴァイオリン/シンセサイザー)から成る3人組バンド。2013年8月に結成され、翌年から本格的にライヴ活動をスタートする。2017年4月にタワーレコード渋谷店限定でリリースされたシングル“キラーガール、ガール、ガール。”、同じく2018年3月の“さよならマジョリティ”が好評を博し、同年9月に初の全国流通盤となるミニ・アルバム『UNITE』を発表。同作収録の“夜はモーション”と“火花”がYouTubeで再生回数を伸ばして話題となる。今年に入って2月に“時鳴りの街”を配信し、フェス出演などでも注目を集めるなか、ファースト・フル・アルバム『Alice』(88Music/Village Again)をリリースしたばかり。