彗星の如く現れ、CDショップなど各所で話題を呼んでいる新人シンガー・ソングライター。その初のフル・アルバムは構想約2年とのことで、出会いや別れ、死生観を描いた12篇の楽曲が収められている。映画「ぼくらの7日間戦争」の主題歌に抜擢された“決戦前夜”などJ-Rockの王道を往く蒼さと疾走感に満ちたナンバーのほか、民族音楽っぽい遊び心に富んだ曲や、静謐なピアノ・インストもあったり。幅広く聴かせる一枚だ。
光があれば闇があるように、出会いがあれば別れがあり、始まりがあれば終わりがある。その揺るぎない世界の理を、Sano ibukiは美しく儚く切なく、そしてどこまでも力強く描き出している。1曲目の“WORLD PARADE”はさすらいを感じさせるイントロから、一気に私たちを物語の世界へと誘う。繊細かつ凛とした強さを放つアコースティック・ギターは、〈光の先の 君に会いにいく〉と決意した〈僕〉の心情を表しているかのようだ。ヒリヒリとしたサウンドに、〈あなたに会いたいから生きたい〉と願いもがく“革命的閃光弾”、もう会うことの叶わない大切な人との別れを歌った“滅亡と砂時計”。〈どこかでまた会おう〉と清々しく響かせる“梟”は、to be continuedというクレジットを期待させる。
生きていく上で、避けては通れない〈出会い〉と〈別れ〉。それぞれのフィクションは、紛れもなく私たちが直面しうる〈現実〉と地続きだ。闇があるから光がより輝くように、別れがあるから再会を望むように、終わりがあるから次の始まりが訪れる。悲しみの少し先にある希望を丁寧にすくいとった12編の物語。『STORY TELLER』は、彼がこれから描いていく壮大なストーリーのほんの序章にすぎない。