Mikiki編集部のスタッフ4名が〈トキめいた邦楽ソング〉をレコメンドする週刊連載、〈Mikikiの歌謡日!〉。更新は毎週火曜(歌謡)日、新着楽曲を軸にマイブームな音楽を紹介していきます。紹介した楽曲は下記SpotifyとYouTubeのプレイリストにまとめているので、併せてお楽しみください◎ *Mikiki編集部
【天野龍太郎】
星野源 “Same Thing (feat. Superorganism)”
星野源が10月14日(月・祝)にリリースする、世界市場を見据えたチャレンジングなEP『Same Thing』。同作から表題曲がApple Musicで独占配信されています。どちらかといえば〈スーパーオーガニズムの楽曲に星野源が参加している〉という趣で(なんて書いたら怒られるかもしれませんが)、スーパーオーガニズムらしいエディット感とビート、ユーモアが炸裂。〈I’ve got something to say/To everybody, fuck you〉なんて詞を星野源が歌っているのも意外性があって楽しい。また〈Wabi sabi/Make it messy〉という一節には、オリエンタリズムをみずから煽るクール・ジャパンな日本趣味に対するノー、というメッセージも感じました。作詞は星野源。
Shurkn Pap “NEW CLASSIC”
姫路のラッパー、Shurkn Papがファースト・アルバム『The ME』を発表。これはアルバムの冒頭を飾る“NEW CLASSIC”のビデオです。A4のビートを聴いた瞬間、〈ついに2000sリヴァイヴァル!?〉と驚かされました。そんな懐かしさと新しさが混在している様から、〈未来は俺等の手の中〉といわんばかりの未来=新たなクラシックとしての貫録を感じさせます。“HIGH CLASS RAP PT2”のビデオもぜひチェックを。
MONYPETZJNKMN “Gimme Da Dope (Prod. U-Lee)”
PETZの新作に続いて、MONYPETZJNKMNの新曲も届けられました。あいかわらず不穏でドープ。紫煙をくゆらせ、紫色のあぶないドリンクでぐらぐらしている感じです。〈君らどう?/俺らもっと〉とダウナーな声で煽るこのあやうさ、ドキドキします。
MIKA & No tengo hambre “花道”
2018年末に大久保ひかりのうまでライヴを観た林ミカさんのバンドのアルバム『Sign』収録曲。実をいうと、ライヴを観たときはそんなにピンときていなかったんですが、このビデオを観て、歌を聴き、ようやく自分のなかですとんと落ちた気がします。なんとも繊細で、いまにも壊れそうな歌とアンサンブルに心が震えました。
折坂悠太&イ・ラン “調律 조율 live recording at 漢江”
弾き語りツーマン・ツアー〈折坂悠太のツーと言えばカー2019〉で共演する折坂さんとイ・ランの弾き語り実況映像。歌っているのはハン・ヨンエというブルース・シンガーの楽曲。動画には日本語と韓国語、両方の歌詞字幕がちゃんとつけられていてフレンドリー。歌い交わすってこういうことなんだろうな。こうしたすばらしい交流を目にすることができただけでも、対談が実現できて本当によかった、と思いました。それにしても折坂さんのガット・ギター、めちゃくちゃいい音……。
CLOW “同じ電車”
シンガー・ソングライター、CLOWのEP『あさを』から。繊細で、でも確信に満ちた歌声の力だけでも圧倒的。〈歌い手〉という言葉はこういうシンガーのためにあるんだろうなと感じさせます。都市の匿名的な人間関係を描く詞もすばらしい。12月20日(金)には下北沢の風知空知でワンマン・ライヴ〈しんしん〉を開催するとのことで、ぜひ彼女の生の歌声を聴きに行きましょう。
なみのり “surf”
待望のファースト・アルバム『Let's Get Lost』を12月4日(水)にリリースするThe World Will Tear Us Apart。そのテアアスやFandazeのメンバーである谷井啓太と元ラグチューシャックのオオノによる大阪のバンド、なみのりがファースト・アルバム『ポートラインより』を発表しました。リアル・エステイトのようなデッドな質感のギター・ポップがセンチメンタルでエモーショナルな〈日本語ロック〉に落とし込まれていて、ぐっときます。ミッスこと谷井さんもすばらしいヴォーカリストなんですが、オオノさんの歌もほんとにいいんですよね。
蛍光灯 “忘れないさ”
正体不明の匿名シティ・ポップ作家、蛍光灯の新曲。ポップで底抜けに明るく、練り込まれたソングライティングにどうしても心惹かれる一方、どこか不気味さを感じさせるのはなぜなんでしょうか……。今回はヴォーカルの音の処理にヤバさ、すなわち批評性を感じます。
にゃにゃんがプー “ほがらかホイ”
先週末、上野水上音楽堂で開催された〈tiny pop fes〉のコンピレーション・アルバム『tiny pop fes disc 1』から。イントロや間奏でステージ上を走り、踊る、にゃプさんはめちゃくちゃカリスマなオーラがあって、ほんとにスターでした。それでこの曲は……いったいなんなんでしょう?
蓮沼執太 “454”
蓮沼執太のニューEP『Oa』から。空間性や音響に重きを置いていて、注意深く聴いていないと聴き逃してしまうような音のひらめきや響きにあふれています。ポップな蓮沼フィルとピュアでエクスペリメンタルな電子音楽であるソロ、という振れ幅もまた魅力的な音楽家です。
Nam Jazz Experiment “Flow”
お経とジャズの融合、という試みがユーモラスにならないクールさ。読経をリズムとメロディー、ヴォーカリゼーションの側面から捉え、パーカッシヴな楽器としてあつかっているのがかなり新しい、と思います。
【田中亮太】
Limited Express (has gone?) “Sweet Talk”
SISTERHOOD BREAK THIS BORDER!!! 時代のうねりを受けて、ますますカッコよくなるリミエキ。YUKARIさんは、若年層の同性(異性もだけど)からのリスペクトのされ方を含め、ほんとにキム・ゴードンみたいな存在になってますね。彼女がライフストーリーを語ったロング・インタヴューをMikikiに掲載予定です。
Hara Kazutoshi “ひと夜”
名盤『楽しい暮らし』から約8年、ついに東京の誇る旨味たっぷりのシンガー・ソングライターがセカンド・アルバム『モンスター・マインド』をリリースしました。ネオアコやUKポスト・パンク的な清涼ながらも尖ったサウンドを志向した新作から、ひときわポップなナンバーをMVで公開。自転車に乗るHaraさん、素敵です。
スピッツ “ありがとさん”
近年のマサムネはソングブック的なゆったりとした楽曲が素晴らしいと思うんですが、この曲はそうしたメロディーに加えて『フェイクファー』『ハヤブサ』あたりの彼らを思わせるオルタナっぽいバンド・サウンドがソー・グッド。
TAWINGS “水仙”
話題を集めるインディー・ガールズ・バンドの新曲は、サイケデリックでヒプノティック。目眩がするかのような恍惚へと誘うクラウトロック調。半端なくかっこいいです。
SAGOSAID “Missing bird“
セカロイきってのオルタナだったshe saidは活動休止中だけれど、フロントの佐合さんはSAGOSAIDとしての活動が盛んになってきました。寂しがりのようで、でも一人きりになりたくてという相反する気持ちが籠もった彼女の歌を聴いていると、そのなかにまだキム・シャタックが生きているような気がしてきます。
【高見香那】
indigo la End “通り恋”
川谷さんの声と歌唱によるところもありますが、歌い心地と耳当たりの良さが追求されたような言葉とメロディーのフィット感に惚れ惚れしてしまいました。
ザ・クロマニヨンズ “クレーンゲーム”
今年もこの季節がやってきました。
【酒井優考】
MONO NO AWARE “かむかもしかもにどもかも!”
早口言葉を曲にするという発想もすごいし、レコーディングとかライヴとかいろんな意味で大変そうなのもすごいんだけど、それ以上にMONO NO AWAREらしいメロディーやコード感が気持ちいいのがすごい。そして歌詞をそのままMVにしちゃう(この手の変なMVではおなじみの)加藤マニさんもすごいし、これがNHK〈みんなのうた〉で流れるっていうのもすごい。すごいことずくめの曲。全部覚えてカラオケで歌いたい!
Sano ibuki “革命的閃光弾”
前作(ミニ・アルバム)ではレヴューも書かせていただきましたが、そこからの進化がすごくて、覚醒したって感じがします。次来るアーティスト候補ナンバーワンかもしれないです。
タカナミ “平成、この夜に”
北海道釧路発、男性4ピースの初全国流通盤より。(ちょっと失礼な言い方になってしまったらごめんなさいだけど)この曲の主人公だけが尻の青いまま平成という時代に取り残されてしまったかのような、そんな思いに胸がギュッとなる感じの曲です。
ノイ。 “ベターザンミュージック”
https://note.mu/shinoyamakosei/n/n1d6d4867d467?
magazine_key=me89136c9c238
THURSDAY'S YOUTHのフロントマン、篠山浩生のソロ名義ノイ。の新譜がnoteで先行リリース。〈NO MUSIC, NO LIFE.〉なんて言葉もありますが、本当は音楽なんて無くても生きていける。そんな当たり前のことの核心を突いた(突かれた)感じがします。
kiara yui “Under the Tree (The Other Side Ver.)”
いまチアキとLAに行ってるキアラさん(今日帰って来るのかな?)の新曲がダークで冷たくってカッコいい。こういう例えはよくないかもしれないけど、〈和製ビョーク〉なんて安易に言ったら〈○○○○二世〉みたいに炎上しちゃうでしょうか。弾き語りヴァージョンを聴いたらまったくの別物だったのでまたビックリ!
崎山蒼志 “むげん・ (with 諭吉佳作/men)”
君島大空との楽曲もすごかったけど、こちらもすごい。どこをどっちがどう作ったのだろう。
椎名林檎 “公然の秘密”
はい、この長すぎる連載のエンディング・テーマです。すでに語りたいことはたくさんあるのですが、来たるべき時のためにまだ黙っておきますね。