ブラジル音楽のスターを長年に渡って支えるドラマー/パーカッション奏者の初リーダー作

 カエターノ・ヴェローゾがギターを弾きながら、サンバの最重要作曲家であるノエル・ホーザがヴァヂーコと共作した《ヴィラの誘惑》を含む2曲を歌っている。さらに2曲あるボーナス・トラックのうちの一曲は、映画『Tieta do Agreste』(97年)のサウンドトラック盤に未収録だったカエターノの自作曲。ジャキス・モレレンバウムがオーケストラの編曲と指揮を手掛けたインストだ。また、アドリアーナ・カルカニョットはホベルト・カルロス&エラズモ・カルロスの80年代のヒット曲を歌い、ジョゼ(ゼー)・ミゲル・ヴィズニッキはグルーポ・コルボ(ミナスのダンス・カンパニー)のために作った自作曲を歌っている。そしてマルセロ・コスタは、ガル・コスタと一緒にシロ・モンテイロ作のサンバを歌ったり、トニーニョ・オルタやルル・サントス等と共演している。

MARCELO COSTA Número 1 Inpartmaint Inc.(2019)

 マルセロ・コスタは、前記した多彩なゲストの面々に加えて、マリーザ・モンチやマリア・ベターニャ、アナ・カロリーナなどの活動も支えてきたドラマー兼パーカッショニスト。ブラジル音楽界の影のV.I.P.的存在と言ってもいいだろう。『Número 1』は、マルセロが59歳にして初めて放ったリーダー作。ただし、2年前に録音された一曲を除き、94年から99年までの間に録音された音源でまとめられている。いわば秘蔵音源集の第1弾だ。

 ブラジリアン・リズムの生き字引のようなミュージシャンのリーダー作だけに、アルバムの本編はサンバやバイーアのリズムが取り入れられた《Alegria》で幕を閉じる。約40年の歴史を持つヴォーカル・グループ、ボカ・リヴリとの共演で、しかもショーロ系の弦楽トリオであるトリオ・マデイラ・ブラジルも客演している。作者は、トリバリスタスの活動でも知られるアルナルド・アントゥネス。本編を締め括るにふさわしい祝祭感に満ちた曲で、マルセロ自身の“喜び(Alegria)”がリズムとしてあふれ出ている。すでに完成しているという第2弾も、楽しみだ。