Swear It Again
7年ぶりの復活、9年ぶりのアルバム! ウエストライフが満を持して送り出した『Spectrum』には変わらぬ真摯な歌世界が広がっている。この円熟味に追いついたのは……彼ら自身の年齢か、それとも時代のムードなのか?

 バックストリート・ボーイズがアルバム『DNA』で19年ぶりの全米No.1に返り咲いた今年1月……歩調を合わせたわけでもなかろうが、かつて共にボーイズ・センセーションを演出してきたウエストライフが大西洋を挟んでカムバックを果たした。アイルランド出身のヴォーカル・グループとして当初5人組でデビューしてから今年でちょうど20周年。数年で旬を逃すボーイズ・バンドが多いなか、彼らは大きな失墜もなく順風満帆にヒットを飛ばしながら〈大人のグループ〉に脱皮した数少ない存在でもあった。何せシングルがデビューから7曲連続で全英1位を獲得した唯一のグループであり、これまで残した全英No.1ヒットの14という数はエルヴィス・プレスリーとビートルズに次ぐ記録なのだ。逆に停滞がなかったせいで疲弊も激しかったのか、グループは2012年に解散を選ぶが、それでも歩みを止めることで各々がリフレッシュし、時代や受け手の成熟も相まって、4人は改めてウエストライフで歌うことを選んだというわけである。

 軽快なビートを備えた復活シングル“Hello My Love”のプロデュースはスティーヴ・マックで、ソングライティングにはエド・シーランも参加。スティーヴといえば99年のデビュー曲“Swear It Again”から『Back Home』(2007年)までの彼らのヒット量産期を支えてきたポップ界の大御所だが、そのエドらを手掛けるここ数年はヒットメイカーとして新たな旬を迎えているわけで、結果的に休止前からのウエストライフの持ち味を地続きのまま現代的にチューニングするにはこれ以上ない適任だと言えるだろう。バラードの“Better Man”、ダンス・ポップの“Dynamite”……と、以降のシングルがいずれもエドとスティーヴの共作だったのも気合いを感じさせたが、そうした実りを経て届いた9年ぶりのニュー・アルバム『Spectrum』は、スティーヴがエグゼクティヴ・プロデューサーとして全体を統轄してもいる。

 アルバム全体を見てもやはりスティーヴ主導のナンバーが中心ながら、メンバーのマークとシェーンがコライトしたトロピカル・ハウス風の“Take Me There”、ジェイムズ・ベイによる“Repair”などライター陣の組み合わせはさまざま。ライアン・テダーもペンを交えたエレガントな電子ポップの“Dance”は、先述の『DNA』やジョナス兄弟の復活作でも腕を揮ったザック・スケルトンの仕事だ。いずれにせよ、どの曲も端正なヴォーカルと昂揚感のあるコーラスを真っ当に押し出した期待通りの出来で、もともと野心的に新しさを追求するグループではなかったからこそ、ここにある普遍的な歌心は新旧リスナーの胸を打つものになっているはず。そんななかにメンバー各々が子どもたちに捧げた真摯な“My Blood”が並ぶのも象徴的で、各々の相応な成熟を体現した理想的な再出発と言えるだろう。