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【久保憲司の音楽ライターもうやめます】第10回 チャンスとカーディ、T.I.の審査員3人が最高なラップ・オーディション「リズム+フロー」

Netflix時代のロック・ファン悲喜こもごも

数多くのロック・レジェンドたちを撮影してきたカメラマンにして、ウェブページ〈久保憲司のロック・エンサイクロペディア〉を運営するなど音楽ライターとしても活躍しているクボケンこと久保憲司さん。Mikikiにもたびたび原稿を提供いただいております。そんなクボケンさんによる連載が、こちら〈久保憲司の音楽ライターもうやめます〉。動画配信サーヴィス全盛の現代、クボケンさんも音楽そっちのけで観まくっているというNetflixやhulu、FOXチャンネルなどの作品を中心に、視聴することで浮き上がってくる〈いま〉を考えます。

今回は、未来のスーパースターを夢見るラッパーたちが競い合うオーディション番組「リズム+フロー」をピックアップ。T.I.、カーディ・B、チャンス・ザ・ラッパーという豪華3人が審査員を務める同プログラムに、クボケンさんはアメリカ音楽カルチャーの凄さを見たそうです。 *Mikiki編集部

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「パンツ濡れちゃう」ほどの巨大エンターテインメント

50歳過ぎているのに、いつも〈フリースタイル・ダンジョン〉に出たいなと思っている久保憲司です。

Netflixがまた画期的なオーディション番組を作ってくれました。ラップのバトル番組なんですが、審査委員がカーディ・B、 チャンス・ザ・ラッパー、T.I.なんです。この本気さ。そして優勝賞金が25万ドル、約2千8百万円です。完全に〈M-1〉ですよ。

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初めはレヴェルが低いじゃんと思ったのが、すごいことになっていくんです。ネタバレになるので書かないですけど、勝ち残った人間がミュージック・ビデオを作るなんてのはよくある話だと思うのですが、そのときに一緒に音楽を作るプロデューサーが、グラミー賞を何度もノミネートされるている超大物の方たちなんです。アメリカのヒップホップがどうやって作られていくのかを完全に見せてくれるのです。日本の音楽関係者全員必見です。

これだけでもビビるじゃないですか、なのにもっと展開が凄くなっていくのです。次は超大物のR&Bシンガーの名曲にその本人と一緒に登場してラップを加えるんです。しかも生バンドで。これだけでカーディ・B風に言うなら「パンツ濡れちゃう」です。最後はグラミー賞クラスの作曲者とまた曲を作って、その新曲でグラミー賞の授賞式で優勝したかのようなライヴを披露すると言う。

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アメリカのエンターティメントをすべて見せてもらいました。

やっぱアメリカは凄いなと、ブロンクスとかの片隅で始まったヒップホップ、ラップという音楽がここまでデカくなるなんて、77年に誰が想像しましたか。アメリカのデカさを感じさせてもらいました。

 

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なにより3人の審査員が最高

カーディ・BがNYを代表し、チャンス・ザ・ラッパーがシカゴ、そしてT.I.がアトランタ、いまいちばん旬のサウスを、そして、この3人でLAにラッパーを探しに行くんですけど、そのエリア毎で、独自の文化が根付いていて、いやーアメリカっていいなと思いました。

でも今回いちばん良かったのはキャラのまったく違う3人の審査員ですよ。クリスチャンなチャンス・ザ・ラッパー、ビッチなカーディ・B 、ビジネスマンなT.I.がいい感じでブレンドしてたんですよ。カーディ・Bなんか整形ババアとしかずっと思ってなかったんですけど、いいプロデューサーなんです。そりゃそうですよね、自分をプロデュースできなければここまで這い上がってこれないですよ。そしてT.I.も「俺も一回失敗してるかな」と言ってましたが、やっぱそういう人たちの助言は重いですよ。

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唯一堅実なのはチャンス・ザ・ラッパーなんですけど、本当に謙虚なクリスチャンだから、そんな良い子で、ラップの世界の頂点に立っているというのはどんだけ大変なことかと思います。イヤらしいことを言うカーディ・Bの発言に本当にすごくイヤな顔をするんですけど、批判をしたりしないですよね。ちゃんと受け止めている。〈違っていてもいいじゃん人間なんだから〉というところがまさにアメリカだなと。そして、この3人が本当に未来のラップ、ヒップホップのために真剣に審査をしていたのが良かったです。

今回優勝した人が本当にシーンに出てくるのか、難しいような気もするのですが、それもやっぱりアメリカの大きさと歴史の長さですよね。

次のシーズンどんな感じになるのか楽しみです。

最後にアメリカ人はフリースタイルがとっても苦手だというのびっくりしました。ほとんどちゃんと決められたラップやっているんですよね。フリースタイルやっぱ難しいんですね。

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