やっぱりバンドだなぁ
――去年の夏には未発表音源を新録した『SONG LIMBO』のリリースもありましたけど、今回、完全オリジナルの新作を制作するということで、改めてバンドが集まったときのムードはいかがでしたか?
「最初に集まったときは、警戒し合っている感じはありましたね。〈またなにか、嫌な思いをしてしまうんじゃないか?〉っていう不安があったんだと思う。『SONG LIMBO』に関しては、アレンジが最初からでき上がっている曲たちの再録だったので楽しくやれたんですけどね。
今回、新作を作るに当たって、僕はデモを作らなかったんですよ。僕がギターで弾き語ったなんとなくのスケッチだけを持っていって、それを、みんなでスタジオでセッションしていこうっていう形で進めていって。それは、ゴメスにとってはすごく画期的なことで」
――特に2000年代のゴメスは、山田さんが家で徹底的にデモを作りこんでいたわけですもんね。
「そう。でも、今回はほとんどなにもない状態からの録音だったので、自分の手の内に対して〈それ、全然ダメじゃん〉とか言われたらどうしよう?みたいな不安も、それぞれどこかにあったのかもしれないです。そういう中で、恐る恐るやり始める感じでしたね。
でも、〈やっぱりバンドだなぁ〉って思いました。意外とスムーズに進んでいったんですよ。ベーシックを録り終えるのも早くて。ただ、そこからのダビングやミックスの作業はやっぱり大変で、時間はかかりましたね。でも、憑き物が落ちるような感覚はありました」
〈これ、ゴメスっぽいね〉と思える場所を探して
――どんな部分が大変でしたか?
「やっぱり、アレンジひとつをとっても、選択肢がいくつもあるんですよ。〈Produced by GOMES THE HITMAN〉のアルバムなわけで、〈これだと派手すぎない?〉とか〈これだとポップすぎない?〉みたいなことのOKのラインを見極めていくのがすごく難しかったです。その〈丁度よさ〉探しに1ヶ月くらいかかりましたね。
いきなりバッキバキに派手なGOMES THE HITMANになるのもおかしいし、〈これ、ゴメスっぽいね〉と思える場所があるはずだと思って、ヴォリュームの違いとか、細かいところを探っていく感じで。そこに時間をかけました」
――その作業も、メンバー4人でやられたんですよね?
「そうですね。録音、ミックスまでベースの須藤(俊明)がやったので。誰も他の人が介在しないレコーディングっていう感じでした。マイクも自分たちで立てていましたし」
――PLECTRUMのタカタタイスケさんが、4曲目“魔法があれば”と8曲目“houston”のプロデュースにクレジットされていますけど、タカタさんの存在は、4人のゴメスになにをもたらしましたか?
「アルバムを作るとなったときに、久しぶりだし、〈もし大喧嘩になったらどうしよう?〉と思ったんです(笑)。そこで、泰ちゃんがいてくれたら、緩衝材になってくれるだろうなと思って呼んだんです(笑)。
彼が最近、プロデュース・ワークをたくさんやっているのも知っていたし、僕なんかよりも断然、ギター・ポップに造詣が深いので、〈めちゃくちゃギター・ポップにしたい曲があるんだけど、一緒にやらない?〉と言って、共同プロデューサーであり、完全に〈5人目のメンバー〉という感じで来てもらって。ものすごくいい風を吹かせてくれましたね。
クレジットされているのは2曲だけですけど、彼の存在はアルバム全体にとって、めちゃくちゃいい影響があったと思います。同世代で、いい時期も悪い時期も知っている友達なので」