世界的なレコードブームがますます加熱する一方、じわじわと再注目されている媒体がCD。国内外のメディアでもCDリバイバルが語られる今、〈CD集めが趣味〉なんて若い方も増えてきているようです。そんな状況を受けて、CD直撃世代のミュージシャン/ライターであるKotetsu Shoichiroによる〈CD再生委員会〉が発足。CDの魅力や文化をコラムやインタビューで掘り下げる連載がスタートです! *Mikiki編集部
普通の人はCDなんてもう買わなくなった?
いや~やっぱりレコードっていいですよね! なんか黒いしデカいしオシャレだし。「POPEYE」を全号持ってるシティボーイならレコードですよ。あとカセットもいいですよね、振るとカタカタいうし。まあでも一番音楽聴いてるのはサブスク、あとYouTubeですね~ってちょっと待って下さいよ! あっ、Kotetsu Shoichiroですけど。音楽を作ったり文章を書いたり〈何で生計を立てているかわからない親戚のおじさん(正月の集いでは大人たちの話に混ざらず率先して子ども達の遊び相手になりがち)〉への道を爆進している男でございますが。気軽に小鉄くんと呼んで下さい、ゆっくりとあなたの目を見て返事します。
レコードだなんだ言ってますが皆さん、CDをお忘れじゃないですか? そうです、あのピカピカ光って丸っこいやつです。えっ、世代じゃないからよく知らない? えっ、近所のゴミ捨て場で見た? たしかにCDは鳥避けとしても使えますが、元々は音楽を聴くためのソフトなんですよ! まったくZ世代のもの知らずっぷりは想像をZするね。
たしかに10年前にも〈普通の人はCDなんてもう買わなくなった〉なんて歌もありましたが(Negicco“アイドルばかり聴かないで”)、この2024年の現在。CD再評価の機運が、僅かではあるが高まりつつあるようなのです! そもそも、データではない〈モノ〉としての音楽ソフトを求める動きは年々増加しつつあるのです。アメリカレコード協会によれば、2021年以降、フィジカルリリース(レコードもCDも含めた音楽ソフト全般)の売り上げは常に上昇しつつあるとのこと。ま、収益の多数を占めるのは依然としてストリーミングであるものの、この傾向は見逃せません。
そして2021年には、2004年以降低迷し続けていたCDの売り上げが、17年ぶりに上昇したのです! どんなアーティストのCDが売れてるのかと言いますと……ビヨンセ、テイラー・スウィフト、アデルといった欧米のベテランから、BTSやNewJeansなど日本でもお馴染みのK-Popグループなどなど。ポップカルチャーを牽引するスターたちの作品はやはりCDでも人気のようです。
新譜だけではありません。ピッチフォーク、ローリング・ストーンなど海外の多数のメディアで〈Z世代の若者らの一部で、CDの再評価が始まりつつある〉と報じられており「この一年(2023年)、ティーンエイジャーの来店・購入が増えている。彼らはジョイ・ディヴィジョンやニルヴァーナなどを好んでいるようです」と語るのはHMV社長のフィル・ハリデー氏。90年代リバイバル、Y2Kリバイバルとともに、CDの再評価がやはり水面下で広がりつつあるようです。
そんなCDを手に入れた欧米の若者たちは、カーステレオで、あるいは実家の倉庫で眠っていたディスクマン(ソニーのポータブルCDプレイヤー)で、ひと世代前の音楽を楽しんでいるそうです。中には、単なる懐かしアイテムとして買って並べるだけで満足、という場合もあるようですが、これもまた消費の一形態。「積読とかいうけど、花を買うのと一緒で、読まない本でもそれが家にあるだけで気分がいい」と言ったのは中原昌也氏ですが、所有することそれ自体が、マテリアルの魅力と言えましょう。これはレコードにせよカセットにせよ同じですが。