コントラリーパレード PARADE miobell(2018)

コントラリーパレードはシンガー・ソングライターのたなかまゆが2001年に大阪で結成したバンドで、現在はサポート・メンバーを加えたバンド編成や弾き語りなどでも活動する、たなかの〈ひとりユニット〉となっている。彼女が昨年11月にコントラリーパレードとして5年ぶりにリリースしたのが6曲入りのミニ・アルバム『PARADE』。同作は張替智広(HALIFANIE/キンモクセイ)、小宮山聖(ザ・カスタネッツ/Ally CARAVAN)、平田博信(Swinging Popsicle)、嶋田修(Swinging Popsicle/the Caraway)、三浦コウジといった名うての音楽家たちを迎えた、新生コントラリーパレードを印象付ける力作だった。

それから4か月。5年というリリースのブランクを埋めるかのように、早くも新作が届けられた。タイトルは『CONTRARY』。6曲入りという構成も同じで、カヴァー・アートを見てもわかるとおり、前作との連続性を強く感じさせる作品だ。タイトルを繋げると〈CONTRARY PARADE〉。公式には〈コンビ・アルバム〉と呼ばれているが、つまり2作は一連なりのセルフタイトルのアルバムとして捉えることができる。

やはり今作も目を引くのはクレジットに並んだゲスト・ミュージシャンの数々で、例えばシャッフルのリズムが軽快なオープナー“子猫アラーム”には、GOMES THE HITMANの山田稔明とSwinging Popsicle/Alma-Grafeの藤島美音子がヴォーカリストとして参加している。一つのパートをそれぞれ藤島と山田が歌う場面もあるなど、“子猫アラーム”は〈feat. 山田稔明&藤島美音子〉と曲名に付けてもいい一曲。開放感あふれるメロディーはシュガー・ベイブ/山下達郎のクラシック“パレード”を彷彿とさせる。

そして、セカンド・ライン・ビートからリズムをくるくると変えていく展開が特徴的な“カウント3”には、なんとL⇔Rの黒沢秀樹が参加。ブルージーな滋味深いギターを聴かせている。ドラムスは元くるりの森信行。

しかし、なんといっても『CONTRARY』でもっとも注目すべきは一曲は4曲目の“ユートピア”だろう。“ユートピア”は現代の新しいポップスを紡ぐバンド、Orangeadeの佐藤望がアレンジとプログラミングを担当している。さらにEP『午後の反射光』をリリースして話題を呼んでいるSSWの君島大空がギタリストとして参加。ドラマーはジャズ・シーンで活躍し、ジェイコブ・コリアーとの共演経験もある荒山諒だ。

“ユートピア”では君島の歯切れのいいリズム・ギターと荒山のパワフルなドラム、リズミカルなシンセサイザーが強力なビート、グルーヴを生んでいる。コントラリーパレードのオフィシャルサイトには〈あなたも聴けばきっとこう言うはず。 「あ、ふつうにいい。」〉と書いてあるが、オーセンティックで耳に馴染むポップスを志向してきたといっていいコントラリーパレードにとっては異色の作品。だが違和感はなく、たなかのヴォーカルからはどこかキッチュな響きもある新たな魅力が引き出され、独特のニューウェイヴィーなアレンジと奇跡的に噛み合っている。見事なバランス感。それも、カメラ=万年筆 (caméra-stylo)や婦人倶楽部でユニークなポップスを作ってきた佐藤の手腕によるものだろう。

新作『CONTRARY』のリリースを機に、コントラリーパレードのディスコグラフィーがサブスクリプション・サーヴィスでの配信が始まった。廃盤となっていたファースト・ミニ・アルバム『ファンファーレ』(2010年)とセカンド『ノクターン』(2011年)も含むカタログが聴けるようになったわけだが、過去の楽曲ときわめてフレッシュな最新作『CONTRARY』(特に“ユートピア”)とを聴き比べるのもおもしろいだろう。