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はたして歌詞はわかりやすくていいのか

――時代がまたフォークのほうに向かっていくと言われてますけど、この2人は宅録とかフォーク、シンガー・ソングライターみたいなとらえ方は起点でしかなくて、将来はぜんぜん違うスタイルに行ってもおかしくないなという気がします。

工藤「今回、横沢さんの新譜(『Yokosawaデモ2』)を聴いて、フィリピンの宅録アーティスト、メロウ・フェロウの『Jazzie Robinson』(2017年)とか、その手の宅録をいっぱい聴いてたときのことを思い出してました。〈やっぱりこの人は音像がいいんだな〉と思ったんですよ。横沢さんがココナッツディスクで〈1人フリッパーズ・ギター〉と呼ばれてたんですけど、それが僕はすごいシャクだったんですよ。〈いねえよ、そんなやつ!〉って思ってたけど、今回のデモではちょっとオザケン的で、メロディー構成がぎゅうぎゅうで飛び飛びな感じがちょっと強かった。普通に感動しました」

横沢「え、マジか(笑)。僕も工藤さんの新譜が送られてきて、サウンドがめっちゃいいなと思った。メロディーに対してのコードやフレーズの当て方がすごい丁寧で、いわゆるインディー的なものにありがちな、メロディーの裏で鳴ってるギターがハーモニーになってないとか、ベースがわざとメロディーを壊すみたいな僕にとっての嫌な感じがぜんぜんない。1人だと難しいとこをバンドでできてるというのは僕は憧れるところでもある。やっぱり人を信用してるんだろうし、その信用に応えてくれる人が周りにいるということもうらやましい」

工藤将也の2019年作『森の向う側』
 

工藤「べた褒めじゃないですか」

横沢「だから、まずサウンドはいいなと思った。でも歌詞は、正直何を言ってるのかよくわからなかった(笑)。フォークな体をとってるけど、結構何言ってるかわかんない。『男の子の嵐』の曲も、すごくわかりやすそうなタイトルをつけたりしてるけど、わかんないことが多い。今回も“フューチャーラヴァー”で突然〈今、虫を殺しました〉とか曲の前に言うけど、そのあとの歌詞はぜんぜん虫を殺したことと関係ないじゃないですか。そういう歌詞って自分のなかでは意味が明確にあるんですか? それとも音の感触だけですか?」

工藤「歌詞はすごく大事ですね。むしろ僕は音の優先順位は低い。歌詞を書いてから曲を乗せていくし、言葉に合うメロディーを探していくので。そのほうが歌っぽくない歌詞が書ける。単純に意味が伝わるか伝わらないかで言えば伝わらないのかもしれないし、〈何言ってんだ?〉って言われることもあるから、結構その辺の考え方というか順番が人とは違うんだろうなと思います。

横沢さんって結構わかりやすい歌詞を書くじゃないですか。僕は〈わかりやすくていいのかな?〉って思っちゃうんですよ。好きってことを〈好き〉と言わないでどう伝えるかとか。たとえばいま悲しいけど、その悲しさをちゃんと吟味するともっと複雑な言葉になっていくなとか。そういうことに僕は興味があるので、いまだにもっといい歌詞書けないかと思うし、人の曲に対しての審査も厳しいところではあるんです。歌詞がよくないなと思ったら曲もよくないと思っちゃうんです」

横沢「僕は、歌詞が出てくるのは曲と一緒ですね。気持ちが最初にあって、弾き語りみたいにして出来てくるという感じです。自分の気質として〈ひとつのことしか言えない〉というのがあるので、どうしてもわかりやすくなっちゃうというか、僕は本当に一瞬、ワッとなったものを歌詞に出してるだけなんです」

横沢俊一郎の2018年作『ハイジ』

 

工藤がマック・デマルコなら横沢はコナン・モカシン

須藤「パッと聴きでタイプは違うと思うんですけど、工藤くんがマック・デマルコだとしたら、横沢くんはコナン・モカシンみたいな存在なんですよ。相対してるけど通じてる部分もある」

横沢「やったー(笑)!」

工藤「あ、一個言いたかったことあります。横沢さんはもっと王子様キャラを出したほうがいいですよ。白い服とか着て。コナン・モカシン的な方向性で行ったほうがいいって今回思ったんです」

横沢「そうなのかな。〈31歳です〉っていうだけで人の見る目が変わっちゃうから、今後は〈18歳です〉って言っていこうかな(笑)」

――こうやって居酒屋で普段着で話してた2人は2019年の貴重な姿だったと、何年か後に思うかも。そういう予感はあります。

工藤「横沢さんは似合うと思うな、王子様は。僕は髭とか生やしたいな」

横沢「じゃあ僕は脱毛します(笑)」

 


LIVE INFORMATION
工藤将也『森の向う側』発売記念ライブ 

​2020年2月7日(金)吉祥寺 曼荼羅
開場/開演:19:30/20:00
前売り:2,500円(別途1ドリンク要)
出演:工藤将也(バンドセット) /横沢俊一郎&レーザービームス ​
★前売り受付
曼荼羅店頭/電話予約(0422-48-5003)
レーベル予約(newfolk.jp@gmail.com