Page 2 / 2 1ページ目から読む
©Les Films Du Fleuve – Archipel 35 – France 2 Cinéma – Proximus – RTBF

©Les Films Du Fleuve – Archipel 35 – France 2 Cinéma – Proximus – RTBF

 純粋な少年の目を曇らせ、洗脳する過激思想への断罪や批判が主眼の映画ではない。明らかに何らかの外部の(強制)力によって急き立てられ、動かされながら、それでもそれが自分の意志に基づくものと信じるアメッドの〈行動〉を通し、僕ら自身の〈行動〉や〈自由〉に根源的な問いかけがなされる。そして愛だけが、汚れ(接触)を極端に嫌う少年をそれでも触覚的な衝動へと誘うだろう。母親や教師は彼を抱きしめようとし、淡い恋仲となった少女からは当然、接触を求められる。アメッドはいつも神の眼(視覚)を意識し、神の耳(聴覚)に対して繰り返し祈りを捧げる。そんな視聴覚的世界への没入に対し、触覚はいかなる対抗軸を提示し得るのか? 他ならぬ視聴覚的表象である映画において遂行される、そんな果敢な挑戦に、僕らは没入せずにいられなくなる。

 


CINEMA INFORMATION

「その手に触れるまで」
監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:イディル・ベン・アディ/オリヴィエ・ボノー/ミリエム・アケディウ/ヴィクトリア・ブルック/クレール・ボドソン/オスマン・ムーメン
エンディング曲:フランツ・シューベルト「ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D.960
第二楽章 Andante sostenuto」(演奏:アルフレッド・ブレンデル)
配給:ビターズ・エンド(2019年 ベルギー=フランス 84 分)
2020年6月12日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国順次ロードショー
http://bitters.co.jp/sonoteni/