安斉かれんが、無料8cmシングル第4弾『FAKE NEWS REVOLUTION』をタワーレコード限定でリリース。これを記念して、タワーレコードではフリーマガジン〈TOWER PLUS+〉の臨時増刊号〈別冊TOWER PLUS+〉を発行いたします! ここでは中面に掲載されたインタヴューを転載。別冊TOWER PLUS+は、タワーレコード全店にて配布中!
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2019年5月1日、令和を迎えたその日に配信シングル『世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた』で安斉かれんがデビューを果たしてから1年。『誰かの来世の夢でもいい』『人生は戦場だ』と3枚のシングルを連続リリースし、人前への露出はないにもかかわらず大きな注目を集めてきた。ライブ・パフォーマンスは鏡越しやXRテクノロジーを用い、近未来を舞台にした映画のようなMVの中にずっと存在してきた彼女。

バーチャルなのでは?との噂もあったことについて、本人は「普通にいますよ」と笑顔を見せた。「直接お会いできる機会はなかったんですけど、今はSNSのコメントなどで応援してくださっている方の声が見れるので、すごく励みになっていました。最初は自分だけの主観で歌詞を書いてきたんですけど、今は徐々に、いろんな世代の方がそれぞれどういうことを考えているのかなとか、自分以外の人の考えていることを想像するようになりました」と、この1年を振り返る。

90年代風のトラックを現在にヴァージョンアップした楽曲に、MVでは近未来の世界を生きるなど、時空を超えたアプローチをしてきた安斉かれんだが、彼女自身は1999年生まれの〈ポストミレニアル〉と呼ばれる世代だ。「でも、個人的には時代感とかは考えたことがなくて。歌詞には、今までの自分がその時に感じた想いや感情だけを書いているので、常に〈今〉っていう感じです」

その理由は、歌詞はすべて彼女が15歳の頃から書きためてきたメモから書いているからだという。「特にこれまでのシングル3部作は、16歳頃に書いたもので、日記みたいな、当時の素直な気持ちです。もちろん今も、〈今〉の気持ちを全部メモに書き残しています」

デビューシングルのタイトル『世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた』のインパクトからもわかるように、デジタル社会とリアル社会がすでに共存している環境に育ってきたからこそ、彼女の描く〈孤独〉は鮮烈だ。4月1日に配信リリースされたニュー・シングル『FAKE NEWS REVOLUTION』もまた、そんな世界に警鐘を鳴らすメッセージ・ソングになっている。

安斉かれん 『 FAKE NEWS REVOLUTION』 avex trax(2020)

〈何処かの誰かと 監視され合っている/世界中どこにも逃げ場は無い〉〈嘘のメディアに踊らされてる〉という強い言葉が並ぶ歌詞は、「高校生の頃のものかな。SNSのことを書きたいなと思って、同じようにメモから引っ張ってきました」とのこと。「顔が見えない中で不条理な批判をする人たちって、面と向かっては言わないと思うんです。そういう感覚って、SNSが存在しなかった頃はあり得なかったと思うし、特に今は判断を見失う人が増えてるんじゃないかな?って感じてます。顔が見えない世界でも優しくあってくださいという希望です」

彼女自身について訊くと、「SNSは楽しいですけど、SNSで言われていることにはあんまり興味ないです! だから、囚われすぎないようにしてほしいんです」と、歌詞どおり強気な表情で言い切った。

また、アップテンポで辛辣なポップに仕上がった『FAKE NEWS REVOLUTION』では、これまでのドラマ仕立てなMVから一転、シンガー・安斉かれんのパフォーマンスがフィーチャーされている。「今まではあんまり表情をつけたことがなかったので。楽しかったですし、これからもっともっといろんな表情だったり、動きを出していけたらいいなって思っています」

そして、新たな表現への挑戦は、音楽のフィールドを飛び越えて展開中だ。4月18日から放送のTVドラマ「M 愛すべき人がいて」でのW主演である。歌姫・浜崎あゆみの経験を基にした小松成美著の同名小説を原作にした作品で、舞台は安斉かれんが生まれた1999年頃。「90年代当時の熱い感じを体験している気分になれて楽しいです。私たちの世代からすると、その時の音楽とかも新しく感じるので新鮮なんです。キラキラしてますよね。お芝居の経験が、アーティストとしてのパフォーマンスにも絶対活きてくると思うので、すごく勉強になります」と意気込みを語った。

『FAKE NEWS REVOLUTION』とドラマ主演を期に、2020年4月から安斉かれんは新しいフェイズに突入することになる。「実際に動いて喋っている姿を出すのは初めてなので、ドキドキです」と語る彼女。これからの展望については、「楽しみですけど、先のことを考えているかっていうと全然そんなことはないです。その時その時で、今やれることを全力でやっていきたいなって思っています」と冷静だ。

では、夢は?と尋ねると、「夢? ないですね(笑)」ときっぱり。いちばん大事なのは、あくまで〈今〉なのだ。それは表現においても同じ。「常にリアルな気持ちを歌詞に書いていれば、そのタイミングで共感してくれる人が絶対にいると思うので。ヘンにこの世代に届けたいからこういう歌詞を書こうとかじゃなくて、飾らずに書いていきたいです」

ただ、音楽に対しての意欲は熱い。「ずっと音楽を好きでいたいな、って想いは昔からあります。だから、いろんな音楽をできるようになりたいんです。もともとはロックから入って、R&Bが好きで、洋楽をずっと聴いていたんですけど、90年代の曲も好きになったし、今いろんな音楽のいいところを吸収している最中なので。歌詞だけにとどまらずに、もっと幅広く挑戦していきたい。それが〈今〉いちばんの目標です」と目を輝かせた。

時代も次元も飛び越え、自らのリアルな感性で歩き始めたばかりの安斉かれん。彼女が表現する〈今〉と、その未来に溢れる無限の可能性から目が離せない。