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 映画の前半で形成された高台(富裕層)と半地下(貧困層)の奇妙で不安定、それでいてユーモラスな共存は、後半における〈亡霊〉たちの出没で破綻を来たす。富裕層が示す穢れを知らない優しさや寛容さは、〈亡霊〉を視界から遠ざけることで成立するが、彼らの豪邸は他ならぬその亡霊の住処である大地の上に築かれ、彼らはそれと知らずに芝生の庭で無邪気なパーティーを催す。他方で、したたかな生命力で富裕層に寄生し、生き残りを図る半地下の住人もまたふとした弾みで顔を覗かせる〈亡霊〉の深い闇に戦慄を禁じ得ない。〈亡霊〉どもの圧倒的な潜勢力が高台(富裕層)と半地下(貧困層)双方を飲み込む光景を目の当たりにしながら、僕らは、自分の足元を支えてくれていたはずの大地が、こんなにも不穏で混沌としたものであったことに驚かされる。そして、本作が国や地域の区別を超えて僕らにもたらすグローバルなインパクトの震源もそこにあるのではないか。富裕層であれ貧困層であれ、いずれにせよ僕らは、大地の上に家を築き、生活を営むのだから……。