リリース毎に深まる表現が評価され、活動規模を拡大してきた3人組が2部作の長編アルバムを完成!! エレクトロニックな音と多面的な視点を貫く言葉を融合させた大作が物語る、名前のない感情とは?

意思から逸脱していく音

 ローファイなサンシャイン・ポップと共に〈架空の街を舞台にした短編集〉を鳴らした2020年のファースト・アルバム『farewell your town』から、インディー・フォークと共鳴するオーガニックなバンド・サウンドを模索したうえで、死生観に向き合った2022年のセカンド・アルバム『roman candles|憧憬蝋燭』へ。その音楽性と歌詞世界を深化させてきた3人組バンド、Laura day romanceにとって、この2025年は2部作の長編アルバム『合歓る - walls or bridges』を完成させた、大きな節目の年として記憶されることだろう。

 「私には中学生のときから仲の良い女の子の友達がいるんですけど、仲が良すぎて、ある意味付き合ってるのと変わらないくらいの関係になっていた時期もあって。好意的な感情があって、家族みたいな感じもするし、わかりやすく〈友達〉と呼んでるけど、そういう感じでもないような気がする。そんな話をメンバーの(鈴木)迅くんにしたら、〈同性に対して恋愛に近い感情を抱くことが身近になかったから、その話を聞いて初めて自分のこととして捉えられたわ〉って。そこから名前の付かない感情や関係性をテーマのひとつに捉えた作品制作が始まりました」(井上花月、ヴォーカル)。

Laura day romance 『合歓る - walls or bridges』 ポニーキャニオン(2025)

 そして、2025年2月に配信リリースされた前編『合歓る - walls』では、“Sleeping pills|眠り薬”や“プラットフォーム|platform”といったメロディーを打ち出した楽曲と、“転校生|a new life!”や“渚で会いましょう|on the beach”といったプログレッシヴなアレンジやリズム・アプローチの楽曲が共存。アコースティックかつモダンなアンサンブルを極めた作品であったのに対し、前編の完成後に制作を開始した後編『合歓る - bridges』では、ベースを活かしたハウシーな“ライター|lighter”や、スキャットのヴォイス・サンプルを散りばめた“プラトニック|platonic”など先行配信の楽曲が予告していたように、DTMを導入したフリーフォームなプロダクションがバンドのポテンシャルを最大限に引き出している。

 「『合歓る - walls』はそれまでの自分のノウハウを結晶化した作品で、具体的な空間や場所を描くイメージでした。それに対して、『合歓る - bridges』はこれまで培ったノウハウでは出来ないものがいいなと。だから自分が扱ってこなかったDTMを用いた曲作りに挑み、ベースラインやリズム・パターンしかないところから楽曲を立ち上げようとした。その結果、心象風景というか、時間や場所、イマジネーションの境界が溶けた、具体的なロケーションが浮かびづらいインナーで抽象的なイメージになりました。打ち込みやシンセ、デジタルのビートが無軌道に鳴り、自分の意思から逸脱して暴走するものをサウンド化している。それがストーリーとリンクしたものになっていると思いますね」(鈴木迅、ギター)。