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コラム

映画「LETO -レト-」80年代のロシアでロックに恋した若者たちを描く、ひと夏の青春群像劇

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 ロック、友情、恋を巡って繰り広げられる三角関係を、監督のキリル・セレブレンニコフはモノクロの映像で詩情豊かに描き出していく。マイクやヴィクトルが愛する、デヴィッド・ボウイやT・レックス、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどロックの名曲が物語を彩るなか、時にミュージカル・シーンを交えて、ファンタジーとリアルを行き交う語り口もユニークだ。なかでも、働いているマイクのために一杯のコーヒーを運ぼうと思いついたヴィクトルとイリーナが、路面電車に乗るシーンで歌われるイギー・ポップ“The Passenger”。ヴィクトルとイリーナが夜を過ごしていることを知りながらマイクが街をさまようシーンで歌われるルー・リード“Perfect Day”のミュージカル・シーンが心に残る。ミュージカル・シーンではメインキャストが歌わず、エキストラが歌っていて、ロックが大衆の音楽だと伝えているような演出が面白い。さらに、歌のシーンではカラーになって、閉鎖的で重苦しいレニングラードの街に色彩が踊る。

©HYPE FILM, 2018

©HYPE FILM, 2018

 そんな感受性豊かな語り口や柔軟なカメラワークは、ヌーヴェルヴァーグの作品を思わせるみずみずしさがある。マイク役を演じているのは、現在のロシアのロック・シーンを代表するミュージシャンのローマン・ビールィク。彼が手掛けた本作のサントラは、カンヌ国際映画祭でサウンドトラック賞最優秀作曲家賞を受賞した。知られざるロシアのロック・シーンを世界に紹介する重要な作品でもある本作だが、セレブレンニコフ監督は撮影が終わろうとしていた頃、2017年に国が提供した予算を横領した容疑で逮捕。本人は容疑を否認したものの自宅軟禁され、自宅で本作を編集して完成させてカンヌに出品した。監督は昨年4月に出国しないことを条件に自宅軟禁が解除されたそうだが、この映画自体もマイクやヴィクトルのロックと同じように権力との戦いから生まれた。自由に生きること、その喜びと痛みが伝わってくる物語だ。

 


CINEMA INFORMATION

映画「LETO -レト-」
英題「LETO(The Summer)」

監督:キリル・セレブレンニコフ
出演:ユ・テオ、イリーナ・ストラシェンバウム、ローマン・ビールィク
◉7月24日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
©HYPE FILM, 2018
後援:駐日ロシア連邦大使館、ロシア連邦文化協力庁、ロシア文化フェスティバル組織委員会
[配給:キノフィルムズ/木下グループ 上映時間:129分]
leto-movie.jp

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