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フィンランドWe Jazzレーベルから届いた未来の音がコラージュされた〈リキッドジャズ〉

 ベルリンを拠点に活動するスウェーデン第2の都市ヨーテボリ出身のテナーサックス奏者オーティス・サンシュ―が、2017年のデビュー・アルバムの続編を携えて戻ってきた。

OTIS SANDSJÖ 『Y-Otis 2』 We Jazz(2020)

 2016年より革新的なサウンドを発掘してきたフィンランドWe Jazzレーベルからリリースされた 『Y-OTIS 2』は、共にベルリンが拠点でヨーテボリ出身、主にノルウェーなど北欧でも活躍するベーシストのフランス・ペッター・エルドがデビュー作に続いてプロデュース。2018年フィンランドで実際目にしたワールド・プレミアライブは衝撃的であり、「本作は私たちの愛すべき直感的なポリリズムの最新形態を際立たせた」とエルドは語っている。

 核となるメンバーは、ドイツ出身のティロ・ヴェーバー(ドラムス)、そしてUK出身のダン・ニコラス(キーボード/シンセサイザー)。最新作では2人のフルートの名手がフィーチャーされ、エフェクター処理されたチェロとトランペットのサウンドが彩り豊かな効果を生んでいる。アルバムを深く掘り下げていくと、サンシュ―&エルドのコラボレーションである『Y-OTIS』や『Koma Saxo』とリンクした刺激的で魅力的な音のモザイクであり、常に新鮮なサウンドを生み出すことに成功している。全体を流れるムードはジャズと同様に30代の彼らが親しんできたヒップホップやエレクトロニカ、ニューウェイブからファンクなど。またスウェーデンのフォークやトラッドをジャズと融合させたヤン・ヨハンソンの郷愁を誘うメロディから多大な影響を受け、自然な形で親しみやすい作品となった。

 特に2本のフルートをフィーチャーした“tremendoce”では、スウェーデン・ジャズ界の巨匠であるヨーナス・クルハマーと盟友のペール“テキサス”ヨハンソンにより、『Y-OTIS』のサウンドに溶け込んだループするリフが有機的に機能している。以前の〈モダン〉という概念をはるかに超え、ジャンルレスで流動的に進化した未来の音楽がコラージュされた〈リキッドジャズ〉にぜひ身を委ねてみて欲しい。