ザラ・マクファーレンが当初ニーナ・シモンなどに例えられた評価に安住せず野心的に音楽の幅を拡げ、ルーツであるジャマイカ音楽を取り入れた前作は彼女の音楽家としてのアイデンティティ確立の宣言であった。とどまらず、今作でロンドンのプロデューサー、クウェイク・ベース、ウールーの2名を迎え、前作同様ルーツに根差しつつ、大胆にエレクトロニックな手法を採用。コンボ的音作りが控えめになりアフロ感やレベル感は抑えられ、よりメディテイティヴかつスピリチュアルなテーマにフォーカスしている。ルーツへの回帰で終わらず、過去を解放し未来を見つめるその歌声は、優しく、美しく、強い。