ホセ・ジェイムズという惑星からの眺め

FINK 『Hard Believer』 R‘coup’D/BEAT(2014)

フィンクことフィン・グリーンオールといえば、『No Beginning No End』にて表題曲や“It’s All Over Your Body”をホセらと共作していたことも記憶される。そんな彼は、この新作の日本盤ボートラでニルヴァーナのカヴァーを披露。グラスパーもそうだが、このあたりのロック・アクトへの愛がアティテュードの表明になる風潮も興味深い。

 

noon 『Full Moon』 ビクター(2013)

ホセ・ジェイムズがプロデュースを担当し、全編をホセ・バンドの面々が演奏した意欲的な一枚。スタンダードを中心としながら、ジョニ・ミッチェル“Big Yellow Taxi”など〈らしさ〉も活きる選曲で、フォーキー路線やボッサにも取り組んできた彼女のマイルドな歌声と演奏の相性は良い。

 

GREGORY PORTER 『Liquid Spirit』 Blue Note/ユニバーサル(2013)

ホセとはまた違う角度からジャズ・ヴォーカルに現代性をもたらした男のブルー・ノート・デビュー作。ディープな歌唱からアーバンな温もりが滲む名作だ。なお、今作のグラミー受賞に伴って、サン・ジェルマンらのリミックスを追加した限定盤も登場したほか、初作『Water』も復刻されたばかり。

 

NICOLA CONTE 『Free Souls』 Schema(2014)

オリジナル作のたびにホセの歌声を重用しているのが、この伊達なクラブ・ジャズ界のマエストロ。こちらの最新作でも“Goddess Of The Sea”にホセをフィーチャーしている。現在のホセはこのスタイリッシュな側面をあえて重視していないようだが、そこにある根本的な艶と色気は隠しようもなく。

 

MORGAN JAMES 『Hunter』 Epic(2014)

ホセに負けじと時代の寵児たちは活躍の舞台を拡大中、ということで……このNYの新進シンガーの処女作ではロバート・グラスパーが“Let Me Keep You”をプロデュース。清らかな歌唱に寄り添う静謐でドラマティックなプレイを聴かせつつ、クワイアを伴って徐々に昂っていく展開が熱い。他曲もエミリー・サンデーっぽいソウル・ポップで良いです。

 

ZARA McFARLANE 『If You Knew Her』 Brownswood(2013)

ホセとすれ違うように2011年にブラウンズウッド入りした彼女。ニーナ・シモン・トリビュート・コンサートでグレゴリー・ポーターと共演も果たした後のこの2作目では、魂の入った硬軟自在な歌唱に圧倒される。ルーツにあたるジャマイカの独立50周年を祝ったジュニア・マーヴィンのカヴァーも。

 

TAYLOR McFERRIN 『Early Riser』 Brainfeeder/BEAT(2014)

昨年にはホセの“Come To My Door”のリミックスを手掛けていた才人は、『Blackmagic』に揃って参加していたフライング・ロータスのブレインフィーダーからアルバムを発表。グラスパーやサンダーキャットらを招いて仕上げたオーガニックなビート群が見事だ。エミリー・キングの参加もあり。

 

CHRIS TURNER 『Lovelife Is A Challenge』 Lovelife/OCTAVE(2013)

上掲のザラと同タイミングでブラウンズウッドのコンピに抜擢されていた彼は、ニュー・スクール出身という縁からエリマージやクリス・バワーズの作品でも歌っているヴォーカリスト。今年に入って日本でCD化された本作は、2012年発表のミックステープを正規化した逸品だ。NYとフィリー人脈を活かしたネオ・ソウル系のヴァイブがたまらない。

 

FRANK OCEAN 『Channel Orange』 Def Jam(2012)

新作に臨むにあたってホセが好んで聴いていたのは、アリス・コルトレーンやジェイムズ・ブレイクをはじめ、ジュニップ、レディオヘッド、ニルヴァーナ、フランク・オーシャンなどだそう。特に雰囲気が直結して感じられる今作には、チャーリー・ハンターも演奏で参加。彼のR&B仕事といえば、やはり……。

 

Kan Sano 『2.0.1.1.』 origami(2014)

先日は黒田卓也らと共にHanah Springの傑作にも参加していたKan Sano。ピアニスト/ビートメイカーという立脚点からシンガー・ソングライター然とした表現に辿り着いた本作は、グルーヴ先行ではなくソング・オリエンテッドな作りという意味でも『While You Were Sleep』に通じるか。

 

RUTH KOLEVA 『Ruth』 Flatline Collective/Pヴァイン(2013)

ヴァーサタイルな表現力を備えるブルガリアのシンガーが、ヴィンセント・ヘルバース+リチャード・スペイヴンらの援護で作り上げた佳作アルバム。ヘルバース&スペイヴンはセラヴィンスにてブロークン・ビーツ系の作風を見せていたが、ここでも生音のグルーヴから快いソウル空間を作り上げている。

 

MOODYMANN 『Moodymann』 KDJ(2014)

ホセのデビュー作に収録の“Desire”をハウス・リミックスし、それを契機にして次作『Blackmagic』へプロデュース参加したデトロイトの怪人。その後の絡みはいまのところないが、よほどお気に入りだったのか同音源はたびたび再利用され、この最新アルバムでも怪しげなエディット群と並んで存在感を放つ。

 

AMBROSE AKINMUSIRE 『The Imagined Savior Is Far Easier To Paint』 Blue Note(2014)

10代から世界を舞台に活躍しているトランペット奏者の、ブルー・ノートでの第2集(通算3作目)。 ジャスティン・ブラウンら自身のクインテットを中心に、ストリングスも交えて優雅な空間を構築している。ベッカ・スティーヴンスの声が浮遊する“Our Basement(ed)”はビョーク好きな両者らしい聴きどころ。