脳科学の視点から子どもたちのモヤモヤに向き合うライフハック本

池谷裕二,ヨシタケシンスケ 『モヤモヤそうだんクリニック』 NHK出版(2020)

 小学校3~6年生の子どもたちからアンケートで募った〈モヤモヤ〉が集められた本。「頭がよくなる薬はありますか?」「どうしたら緊張しませんか?」「AIが発達すると人間の仕事はどうなりますか?」など約30個。勉強に関するモヤモヤが多いが、〈勉強〉を〈仕事〉に置き換えると、そのまま大人が日頃抱えている問題になるから面白い。そうか、我々は小学生の頃から同じモヤモヤにずっと悩まされているのか……。

 さて、そんな子どもたちからのモヤモヤ相談に乗ってくれるのが、脳研究者の池谷裕二と絵本作家のヨシタケシンスケ。最近ではテレビのコメンテーターとしてもおなじみの池谷だが、2010年には『高嶋ちさ子×池谷裕二 プレゼンツ ベイビー・ブレイン・クラシック』というアルバムをリリースしており、〈脳科学〉の視点から子どもの発育にいいクラシック音楽について語っていた。今回も同様に、最新の脳研究の結果などを紐解きながら、科学的な視点で子どもたちのお悩みに向き合っている。

 たとえば、誰もが探し求めている〈やる気のスイッチ〉は、実際に脳の中にある〈淡蒼球〉という部位が担っていて、そこを運動などで刺激するとやる気が出るなど、目からウロコの役立つ知識が満載。「ちっとも集中できない」というお悩みには、「できなくて当たり前。なぜなら脳にとって集中とは不自然な行為だから」と答え、脳ではなく身体の疲労が原因だと説く。しかし最新の脳科学をもってしても、勉強の王道は今も昔も変わらない。一夜漬けの丸暗記で得た知識は長持ちせず、理屈を理解し、繰り返し使わないと身につかないと科学的にも証明されているのである。

 勉強や運動で悩んでいる子がいたら、〈なんで自分はできないんだろう〉と劣等感を抱く前に、ぜひ読んでみてほしい。ユーモアをもって一緒に解決策を考えてくれる池谷や、斜め上を行くイラストでテーマを深めてくれるヨシタケが、親でも先生でもない立場で新たな〈気づき〉を与えてくれるはずだ。