©Scott Jarvie

ヒット曲とクラシックの名曲との合わせ技が最高の凄い〈奴ら〉この10年の集大成。

 独創的なピアニストと凄腕チェリストをメインに、映像クリエイターと音楽プロデューサーを加えた4名からなるユニークな異能集団、ピアノ・ガイズ。ポップスやロック、映画音楽のヒット・ナンバーとクラシックの名曲を絶妙に融合・リアレンジし超絶技巧で披露。大自然を背景に使用したり、ユーモアを交えた演出の凝った映像版でも話題を集め、動画の総再生回数は既に驚異の20億回を突破している。そんな彼らから2021年のグループ結成10周年を記念する、ニュー・アルバム『10~ベスト・オブ・ピアノ・ガイズ~』が届けられた。

THE PIANO GUYS 『10』 Masterworks/ソニー(2020)

 本作はオリジナル盤と初のベスト集からなる嬉しい2枚組。ディスク1は新曲と未発表曲で構成されているとはいえ、殆どのトラックが(早いもので1年も前から)YouTubeでミュージック・ビデオを公開済みなのが実にこの4人らしいところ。冒頭を飾る、コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック界の若き歌姫ローレン・デイグルのヒット曲“ユー・セイ”とベートーヴェンの“悲愴”ソナタをマッシュアップした佳曲のMVも、地元ユタ州の雄大な風景の中で撮影された映像が素敵過ぎるのだけれど、何といっても必見なのは、ルイス・キャパルディの全英&全米No.1シングル“サムワン・ユー・ラヴド”をよりアコースティックにカヴァーしたトラックで、男女のバレエ・ダンサーを起用した同曲の感動的に美しいMVは約1,110万回も視聴されている! もちろん彼らの魔法のような手腕は映像なしでも十分に実感できる。例えばセレーナ・ゴメスの“ルーズ・ユー・トゥ・ラヴ・ミー”にショパンの“雨だれ”を絡めることで生まれた光と闇の世界が紡ぎ出すカタルシスなどは見事としか言いようがない。他にもコロナ禍がモティーフとなったオリジナル曲“ベター・デイズ”や日本盤ボーナス・トラックのムソルグスキー“展覧会の絵”(2020 Remix)など聴き所が満載。一方のディスク2には、これまでの輝かしいキャリアをハイライトで振り返るべく厳選された人気の15曲をリマスタリング収録。ワン・リパブリック“シークレッツ”+ベートーヴェン“運命”もあれば、シーア“タイタニウム”+フォーレのパヴァーヌや、ヴィヴァルディ風”レット・イット・ゴー”からレイチェル・プラッテン“ファイト・ソング”+“アメイジング・グレイス”(※スコットランドで撮影された壮麗なMVもぜひチェックを!)まで、いっさい捨て曲なし。心を打つ旋律にジャンルなど関係ないのだ!