日本デビュー作『ポップ・ミーツ・クラシカル』の表題通り、ポップやロックの人気曲とクラシックをマッシュアップした作品をアイデア豊かなヴィデオで世界に発信。これまでに総動画再生回数4億7000万回超えと、YouTubeでセンセーションを巻き起こし、たちまち人気者となったピアノ・ガイズ。ピアノのジョン・シュミット、チェロのスティーヴン・シャープ・ネルソン、映像のポール・アンダーソン、音楽プロデューサーのアル・ファン・デル・ビークから成る。ピアノ・ガイズは、ポールの経営していたピアノ・ストアの店名だ。「ジョンとスティーヴは20年近く一緒に演奏していた。4年前にピアノの販売促進に新聞やラジオの広告でなく、それまでと違う方法としてヴィデオの制作を思いついた。それで、しばらく前から知り合いだったジョンに出演を頼んだら、快諾してくれて、スティーヴも紹介してくれた。それが始まりさ」

THE PIANO GUYS Pop Meets Classical Sony Music Japan International(2014)

 ジョンは25年近いキャリアを持ち、自作のインスト・アルバムを8枚発表し、地元ユタ州から米国西部一帯で活動を行っていた。「ビリー・ジョエルベートーヴェンを結びつけたのが、僕のスタイル。クラシックが大好きだけど、ビリー・ジョエルと80年代の音楽も大好きなんだ。それらが影響源だから、作曲すると、両方が混ざったようなサウンドが生まれるわけさ」

 スティーヴは8歳でチェロを始めた。「僕はADHD(注意欠陥多動性障害)だったので、集中力に欠き、練習がとても大変だった。両親が根気強くつきあってくれて、地元で一番の先生に学び、音楽の学位もとった。でも、ADHDのせいで、クラシックだけに集中するのがむずかしかったから、ギター、ドラムズ、ピアノなども学んだ。そして、それらの楽器の技巧を全部結びつけ、チェロに応用しようと考え始めた。それがピアノ・ガイズの準備になった。今の僕はこれまでに実験してきたことのすべてを用いているんだ」。彼は金属胴体のチェロまで含む19種類もの音色の異なるチェロを駆使する。そんな独創的な相棒をジョンは「彼みたいなチェロ奏者は世界でただ一人だ」と称える。

 つまり、「ポップとクラシックの出会い」はねらったものではなく、彼らの音楽性の根本に元からあったのだ。ユタ州出身の彼らの音楽は宗教的なものではなかったが、以前の主な活動の場はモルモン教会などを回る興行系統だった。そこでの観客の大半は家族連れなので、クラシックの要素もポップの要素もある曲とエネルギッシュな演奏は、子供からお年寄りまで、どの世代にも受け入れられる音楽として理にかなっていた。その経験で培ったものが今ピアノ・ガイズとして幅広い人びとの心を掴むことに活かされている。