私も今一歩深く音楽を掘り下げて聴いてみたい。そんな思いを持てた一冊。音楽評論家の吉田秀和氏の著作は逝去後も様々な編集で書籍発売が続く。その存在の大きさは年々増している。これまでは作曲家をテーマにした、その作品論が主な内容だった。今回は初めての〈対談集〉。主に1950年代から1970年代に行われた、演奏家、オーディオ、オーケストラ、歌手、教育などに関するテーマをそれぞれの専門家との対談を収録。冒頭の中島健蔵氏とのかなり尖った対談から、欧米旅行を経て視野が広がった語り口への変遷も読み取れる。個性ある演奏を正当に評価したいという吉田氏の意思がひしひし伝わる。