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コラム

映画「エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット」ザ・クロマニヨンズやOKAMOTO'Sら仕事仲間の証言を交え独創性を炙り出すドキュメンタリー

©2020「エポックのアトリエ」製作委員会

レコード・ジャケットというアートをデザイナー視点で楽しむドキュメンタリー映画

 ザ・クロマニヨンズの印象的過ぎるジャケット・デザインや「レコード・コレクターズ」誌の表紙などを手がけるデザイナーの菅谷晋一。彼のレコード・ジャケット制作の現場に密着しながら、一風変わった発想がどのようにして芽吹くのかを追いかけるドキュメンタリー作品が作られた。既成の枠に縛られることのない自由気ままな作品を目にしながら、この作風はいったいどのようにして形成されていったのか?と気になっていた人も少なくないと思うが、この作品を観るかぎり、もうひとりのバンド・メンバーとして音楽の内部へと潜り込み、頭の中で響き始めたイメージを具現化していくのが彼の基本的な手法だとわかる。そんな菅谷の仕事ぶりに絶大な信頼の置くザ・クロマニヨンズ(彼らのシングル“クレーンゲーム”とアルバム『PUNCH』の製作工程が映画の主要部分を構成している)やOKAMOTO'Sなどさまざまな仕事仲間たちのインタビューが随所に挟み込まれていて、彼ならではのイメージの鳴らし方=セッション方法の特殊性について語っているのだが、出演者のいずれもが、どの作品にも彼独自のリズムが息づいていて、それが不思議なグルーヴを生み出す要因になっていることを伝えようとしているように見えてならない。

©2020「エポックのアトリエ」製作委員会

©2020「エポックのアトリエ」製作委員会

©2020「エポックのアトリエ」製作委員会

 とにかく、愛嬌と毒を併せ持つへんちょこりんでへんてこりんなリズムがやけにいとおしい。例えば、ザ・クロマニヨンズのマスコット・キャラクター〈高橋ヨシオ〉などに抱く感覚もそんな感じだったってことをこのドキュメンタリーは改めて気づかせてくれる(なんともマジカルな高橋ヨシオ誕生物語が明らかにされている点はある意味で貴重)。どうにもトリッキーなんだけどいつだって的確な答えを出してくる彼の仕事ぶりについて、根底にはつねに優しさと思いやりが感じられる、と指摘してみせる甲本ヒロトはやはりさすがだ。また、アプローチがどうしても斜めからになってしまう性質やひねくれたセンスを見抜いているのは、OKAMOTO'Sのメンバーたちで、セッション相手としてこのうえなく刺激的な存在であることを嬉々として語っている。お茶目でしゃれっ気があって、ホンワカしているけれどどこかストレンジ。そんな絶妙なバランス感覚が、秀逸極まりない彼の身体のフォルムとイメージ的にかなり合致している事実を見抜いてみせる演出もまたみごと。ひょっとしたら、丸っこくて愛くるしいあの体型こそが彼の手がけたデザインのなかでもっとも雄弁かつ豊饒なものだと言えるのではないか?なんて無邪気な物言いをしたくなってしまうところがまたこの映画の不思議な魅力だったりするのである。菅谷の柔らかな物腰とユーモラスな人柄をなぞっているような青柳拓次(かつて彼のバンド、LITTLE CREATURESのPVを菅谷がクレイアニメを用いて監督してる)による劇伴が実にいい。加えて、真島昌利をフィーチャーしたテーマ曲もいい。うまく言えないけれど、切なくてしょうがなくなる。

 


CINEMA INFORMATION

映画「エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット」
出演:菅谷晋一、ザ・クロマニヨンズ<甲本ヒロト、真島昌利、小林勝、桐田勝治>、OKAMOTO’S <オカモトショウ、オカモトコウキ、ハマ・オカモト、オカモトレイジ>、青柳拓次、VLADO DZIHAN、DJツネ、佐藤有紀、石川明宏、森内淳、信藤三雄、佐々木進
プロデューサー・監督・編集:南部充俊
撮影:千葉真一(J.S.C)
音楽:青柳拓次
エンディング曲:青柳拓次 featuring 真島昌利
配給:SPACE SHOWER FILMS (2020年 日本 96分)
©2020「エポックのアトリエ」製作委員会
2021年1月8日(金)より新宿シネマカリテほかにてロードショー!
epok-film.com

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