Photo by Louis Browne

ディズニー&ピクサーの新作として話題の映画「ソウルフル・ワールド」。ジャズ・ミュージシャンを夢見る音楽教師のファンタジックな物語は、ソウルフルかつ味わい深いジャズで彩られている。その劇中音楽やエンディング・ソング“It’s All Right”を担当しているのが、ジョン・バティステだ(『ソウルフル・ワールド オリジナル・サウンドトラック』の購入はこちら)。

バティステの才は、多方面で知られている。2016年にフォーブス〈世界を変える30歳未満の30人〉へ選出され、グラミー賞とエミー賞にノミネートされた経験がある一方、平和的な活動家として尊敬を集め、ファッション・シーンからも熱い視線を送られる――まさに、いまアメリカ音楽界における最重要人物の一人と言っていい。

そんなバティステのニュー・アルバム『WE ARE』がついに完成、2021年3月19日(金)にリリースされる。この記事では新作に向け、彼自身の生の言葉を引きながら、ジョン・バティステという音楽家の姿を伝えたい。 *Mikiki編集部

JON BATISTE 『WE ARE』 Verve/ユニバーサル(2021)

 

「ソウルフル・ワールド」でピアノを弾いているのは……

ジョン・バティステが音楽を担当した映画「ソウルフル・ワールド」が昨年末の配信以来、大評判となっている。アニメーションだけれど、大人の心に響く作品で、多くの人が2020年のベスト映画にあげている。劇中で主人公ジョー(声をジェイミー・フォックスが担当)が弾くジャズ・ピアノは、ジョンの演奏をそのままアニメ化したものだ。その映像を初めて観た時、「僕の指の動きがアニメーションになっている!! ワォ~!!!! 凄すぎるとショックだったよ」とジョンは言う。

『ソウルフル・ワールド オリジナル・サウンドトラック』収録曲“It’s All Right”

これまでにスパイク・リー監督の映画「Red Hook Summer」(2012年)にオルガン奏者として出演したことはあるが、本格的に映画音楽を手懸けるのは初めて。ピート・ドクター監督の「ジャズを聴いている人なら誰でも、ファンでも、初めて聴く人でも、自分が入り込めると思えるような曲を書いて欲しい」という言葉に心動かされて快諾した。

「ソウルフル・ワールド」の音楽についてジョン・バティステやジェイミー・フォックスらが語ったインタビュー映像

 

バスキアを尊敬する「ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア」の音楽ディレクター

日本での知名度は、これからだけれど、すでに全米ではよく知られた存在だ。その理由のひとつが、2015年から人気トーク番組「ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア」の音楽ディレクターを務め、主宰するバンド、ステイ・ヒューマンと共に毎晩演奏していること。番組にはさまざまなゲストが出演するので、そこから発展して親交を結ぶアーティストは少なくない。たとえば、マック・ミラーやアンダーソン・パーク。ジョンは他に優れたファッションセンスでも有名で、アメリカ・ヴォーグで特集が組まれたり、コーチの広告にジェニファー・ロペスやマイケル・B・ジョーダンらと登場したりと、幅広い活躍ぶりが彼の名前を全米に広めた。

ジョン・バティステとマイケル・B・ジョーダンらがモデルを務めた〈コーチ × ジャン=ミシェル・バスキア〉コレクションの映像

さらに、バスキアの生涯を描いたミュージカルの音楽をジョンが担当することになっており、ジョンはもともと彼の創作スピリットに影響を受けているとのこと。メジャー・デビュー作『Hollywood Africans』(2018年)のタイトルもバスキアの作品名に因んでいる。

2018年作『Hollywood Africans』収録曲“Don’t Stop”