〈お涙頂戴もの〉がどうしても好きになれないと公言していたダグラス・サークが〈お涙頂戴〉なメロドラマの巨匠というのも不思議に聞こえるかもしれない。本BOX収録の「心のともしび」に至っては、原作は馬鹿馬鹿しくて読めたものではないとまで言っている始末なのだ。しかし監督した映画は、〈お涙頂戴〉でありつつ見事な傑作になってしまうのである。その魔法は、本BOX収録の日本初ソフト化となる「大空の凱歌」やフォークナーが自作映画化のベストに挙げる「翼に賭ける命」を見ればより深く分かるかもしれない。ファスビンダーやトッド・ヘインズ、タランティーノらが尊敬してやまないサークの〈知性〉に打ち震えようではないか。