ロックとバンドと、ソフトバンクホークスへの偏愛という絆で結ばれた2人組である。ギタリストは元The Cigavettes、近年はサポート・ミュージシャンやプロデューサーとして活躍する山本幹宗。ヴォーカリストは、舞台、映画、ドラマなど引く手あまたの俳優・永嶋柊吾。異なる道を歩んできた二人の運命のクロスロード、それがsunsiteだ。
「いろんな方に〈バンドやりなよ〉と言われていたんですけど、2016年から19年ぐらいまでは忙しくてなかなか時間が取れず。それがコロナで全部なくなったから、仲のいいYogee New Wavesの上野(恒星)くんと曲を作り出したのがきっかけですね。で、〈ヴォーカルどうしようか?〉ということで、思いついたのが柊吾だった」(山本)。
「〈バンド組むんだ?〉〈楽しみですね〉とか言ってたら歌うことになって、びっくりする気持ちすらなかった。〈何言ってんだろう?〉って感じ。いまだによくわかってないけど、楽しいです」(永嶋)。
共通の友人である俳優の仲野太賀を通して知り合い、俳優仲間の遊びバンドで歌った永嶋の声を気に入ってスカウトした山本。最初に手掛けたのは、〈ヴォーカルの癖を抜いて真っ白にすること〉だった。
「楽曲の持ってるグルーヴ感に、真っ直ぐな歌を乗せたかったので、(野球の)プロの世界に入ってキャンプでしごかれる感じ。でも柊吾はそれができるんですよ。そのへんの兄ちゃんを連れてきても、こうはならない。だから〈役者とギタリストが出会って化学反応が起きました〉とか、そんな簡単な話じゃないし、僕はその先に期待してます。ここは本当にスタート地点」(山本)。
ファースト・アルバム『Buenos!』は、The Cigavettes時代にファンを熱狂させた、マジカルなグッド・メロディーのさらに先を行く。完全洋楽志向だったThe Cigavettesに対し、sunsiteはすべて日本語詞による、歌謡曲やフォーク・ソングにもエリアを広げた包容力豊かなものだ。
「そこは完全に、年齢を重ねたことによる人間性の変化ですね。ポップなものをやりたいし、みんなと繋がりたいんですよ。でも、いま流行っているようなものはやりたくないから、そのなかで極限までポップに歩み寄るというか、楽しみながら行けるギリギリのところまで行ってみました」(山本)。
「あんまり自分の歌だと思ってないというか。普通に〈いいなあ〉と思いながら聴いてます」(永嶋)。
たとえば5曲目の“夏の終わり”は、「リズムはカントリーっぽい感じで、節回しははっぴいえんど時代の細野さんのつもりで作ったら、河島英五っぽくなった(笑)」(山本)という、意外性溢れる和洋折衷。大瀧詠一を引き合いに〈引用〉の楽しみを語る、生粋の音楽マニア心理が山本幹宗のアイデンティティーだ。
「そこだけが僕の生きる楽しみなので(笑)。3曲目の“ネオンライト”はフィル・スぺクターと組んだジョン・レノンで、7曲目の“レッツゴーレインボー”はビーチボーイズ。“I Get Around”に〈土曜日の夜に女の子を連れ出さないなんてつまんない〉みたいな歌詞があるんですけど、僕らは同じメロディーで〈土曜日の夜に何もしない〉ことを歌ってる。冗談ですけど、そこまで伝わらないかな(笑)」(山本)。
ほかにも「レコード・バーの主人が喜びそうな小ネタ」(山本)が満載の全8曲。〈夏〉〈海〉〈青春〉など、ノスタルジックに煌めくワードを散りばめた歌詞も含め、これはある意味、2021年の『A LONG VACATION』かもしれない、と言ったら言いすぎだろうか?
「二十歳ぐらいの知り合いが、インスタのストーリーとかに乗っけてくれているので。〈その年代でもいいと思うんだな〉と思うし、若い人にも聴いてもらえたら」(永嶋)。
「幅広い層に聴いてほしいし、こういう音楽が普遍的であると信じたいですよね。そうであってほしいと思います」(山本)。
sunsite
元The Cigavettesの山本幹宗(ギター)、俳優の永嶋柊吾(ヴォーカル)から成る2人組。前バンド時代からくるり、銀杏BOYZ、never young beach、エレファントカシマシなどのサポート・ギターや、Attractions、片平里菜、原田珠々華らさまざまなアーティストのサウンド・プロデュースを担ってきた山本が、菅田将暉“ベイビィ”の作曲を手掛けるなど音楽活動も行ってきた永嶋に声を掛けることで2020年に結成。Yogee New Wavesの上野恒星(ベース)、BOBO(ドラムス)を迎えてレコーディングを開始する。2021年2月には配信シングル“転がる石の夜”“夏の終わり”を送り出し、このたび、ファースト・アルバム『Buenos!』(TOWER RECORDS)を5月5日にリリース予定。