近年、レーベルに所属せず、DIYで活動するアーティストが増えてきています。イギリスには〈AWAL(Artist Without A Label)〉という名前の音楽ディストリビューション・サービスが存在するほど。

日本国内でも、DIYで活動するアーティストが増加しています。今回、〈TOWER DOORS POWER PUSH!!!!〉に選出したシンガー・ソングライター、a子もその一人です。

TOWER DOORSでは、彼女を〈TOWER DOORSが選ぶ2020年ベスト・ニュー・アーティスト5組〉に選出するなど、a子の才能に注目してきましたが、今回、改めて彼女により深く迫っていきます。

〈TOWER DOORS POWER PUSH!!!!〉の特集第1回目は、a子へのロング・インタビューをお届けします。彼女の鮮烈な音楽性やセルフ・プロデュースへのこだわりなどについて、じっくりと訊きました。なお第2回目は、彼女のクリエイティヴ・チーム〈londog〉に迫る企画を予定しています。

また、テキストだけでなく、Zoomでのインタビュー映像もTOWER DOORSのYouTubeチャンネルで公開しています。a子のリアルな語りを聴くことができるので、ぜひチェックしてください。

a子のインタビュー動画


 

レコード・ショップのおじいさんとの出会い

――音楽に積極的に触れるようになったのはいつですか? a子さんが自覚的に音楽を聴き始めた時期や、それがどのアーティストのどの作品だったのかも教えてください。

「積極的に触れたのは中学1年生くらいからです。近くのレコード・ショップの店主のおじいさんが、音楽を色々と教えてくれました。中学生の女の子が一人でレコード・ショップに通うのが珍しいのか、とてもかわいがってくださいまして。そのときに(エリック・)クラプトン、ソフト・マシーン、ビートルズ、ライザ・ミネリ等いろんなアーティストを教えてくれて、興味を持ちました」

――〈6つの質問〉ではソフト・マシーンの音楽を聴いて衝撃を受けたと語っていましたが、特にどの部分に衝撃を受けたのでしょうか?

「最初、レコード・ショップのおじいさんが、私にお金がないことに気を使ってくれて、ソフト・マシーンのCDを貸してくれたんですよ。それで家に持ち帰って聴いたのですが、そのとき初めてプログレというジャンルの音楽を聴いたんです。特にソフト・マシーンはぐちゃぐちゃで、レコード・プレーヤーが壊れたのかと最初は思いました……(笑)。

でも、初めて聴くジャンルにしてはすごく惹かれまして、何回も何回も聴いていくうちに〈こんなにいっぱいの感情を音に詰めれんのか〉と不思議な気持ちになって。そこから新しい刺激求めて、ほぼ毎日レコード・ショップに通って、おじいさんと音楽の話をしてました」

――ちなみに、そのレコード・ショップに訪れたきっかけは、なんだったのでしょうか?

「友達がいなくて暇で……(笑)。土日の休みに〈何しようかな〉と思いまして。自転車で色々な場所を回るのが好きだったんですけど、そのレコード・ショップは、アンティーク・ショップも兼用していて。最初は、近所にあるアンティークを売っている店だと思っていました。興味があったので一人ですたすた入ったら、そのおじいさんがいらっしゃって。〈奥にレコードもCDもたくさんある!〉と思って、話しかけたら優しくしてくださったのがはじまりです」

――11歳でお父さんにギターを買ってもらったことが、演奏を始めるきっかけだったそうですね。ご家庭での音楽環境について教えてください。

「11歳のときにギターを買ってもらったはいいのですが、たぶんあれは父親が、ただ自分が弾きたかったために私に与えてくれたんだと思うんですよね……。そのあと、何も教えてくれなくて。なので、独学で弾き方とかを練習しました。最初なんて、ギターのネックがどちらかわからなくて、反対向きに弾いていました。途中でやけに弾きにくいなと思って変えて(笑)。

でも、父親は音楽が好きで家にもレコードとかCDとかがたくさんあったので、音楽は昔からたくさん聴いていました」

――ラジオ番組「sensor」にご出演いただいた際に、YUIやTaylor Swiftに影響を受けて弾き語りをしていたとおっしゃっていました。それも独学でやっていたのでしょうか?

「そうですね。ギターをもらったばかりの頃は、YUIやTaylor Swiftを聴いていたので、そういう好きなものを仕方なく耳コピで弾いたり、雑誌とかに載っているものを見ながらやったりしていました」

a子の「sensor」でのインタビュー