いまも昔も自分の好きな楽曲を作る
――2018年から音楽活動をされているそうですが、その頃の音楽性は現在のものと異なっていますか?
「いや、いまと一緒で、〈自分の好きな楽曲を作る〉っていうのをやっていましたね。上京してバンドを組んで、メンバーの中村(エイジ)さん(キーボード)とよく2人で曲を制作しています。
最初に作った“Blue gill”という楽曲があるのですが、それを聴くかぎり、いまやっている楽曲と変わらないなと感じます。この曲は、〈わたしの大好きなインディー・ポップ、ドリーム・ポップ、エレクトロ、ロックを足して割った〉みたいな楽曲で、いまと趣味は変わってないですね。もちろん新しい音楽をいっぱい聴いて、その頃よりはいまのほうが視野は広いと思いますが」
――やはりインディー/オルタナティヴがa子さんの音楽のベースなのでしょうか?
「どうなんでしょうか。でも、中学生の頃は、よくインディー系のアーティストのCDをお店に行って漁って聴いていたので、ルーツにあるかもしれません」
――ちなみに、その頃によく聴いていたアーティストは?
「CDを買うときにジャケットをバーッと並べて、ジャケ買いをしていました。ジャケットがいい=自分の好みな音楽であることが多かったので。それで、家に帰ってバーッと聴いて〈終わり!〉という感じだったので、あまりアーティスト名は気にしていませんでした。このアーティストがどんな人で、どんな音楽なのかは気にせず、曲をひたすら聴くということが趣味だったんです。なので、正直覚えていないですね(笑)。〈ずっと聴いてたあのバンド、なんだっけ?〉みたいな。もちろん有名なアーティストは把握していましたが、マイナーなアーティストも聴いていたはずなのに、忘れてしまっています(笑)。
あと、ジャケ買いなので、たまに〈うわー、全然好きじゃない〉というのもありました。〈これは絶対ロックだ〉とか〈パンク色がこのジャケットにはある〉とワクワクして家に帰って、いざ聴いてみたら、アフリカの民族系の音楽だったときもありました(笑)。でも、もったいないので、ずっと聴いていました」
――a子さんは、2019年の〈出れんの!?サマソニ!?〉でファイナリストに選出されました。その後の反響はどうでしたか?
「反響……どうでしょう、あったのでしょうか……。でも、〈出れんの!?サマソニ!?〉のライブがLIQUIDROOMであったのですが、それが終わった後にInstagramのフォロワーが増えたり、DMとかで〈ライブ、良かったです〉みたいなことを言ってくださる人が何人かいらっしゃって、〈すごい〉とは思いました。もしかしたら、あれがきっかけで私を知ってくださった方がいるのかもしれないですよね……! 自分ではよくわからないです」
――現在のスタイルに影響を与えたアーティストはいますか?
「私は、ヘビーにハマるアーティストが週一単位で変わるんですよ。毎週ハマるアーティストが変わっていくので、その日が制作する日であれば、気分でアレンジを変えたりとか曲調を変えたりとか。制作前であれば、ハマっているアーティストのアレンジがかっこいいから自分たちの曲の中に入れて作ろうと思ったりとか。毎回変わるから、〈この方!〉っていうのはいないですね。
もちろん、椎名林檎さんはずっと好きです。あとは、海外のアーティストであればフライング・ロータスとかメラニー・マルティネス、いまであればビリー・アイリッシュとか、常に好きなアーティストは頭の中にいるので、それプラスいまハマっているアーティストたち、という感じです」
――勢いで入れたアレンジに、ミックスやマスタリングの段階で違和感を覚えることはありますか?
「ミックスしているときは、結構ありますね。思ったよりハマっていないなとか。でも、それが結構毎日起こりますね。〈やっぱり違う〉とか〈これはよかった〉とか、一日ごとに調節していって、最後にマスタリングになります。なので、マスタリングのときに違和感を覚えることはありません」
――楽曲制作において、特に何を重視していますか?
「フィーリングといいますか、気持ちよさを重視しております! 〈いいね!〉となったらOKとなることが多くて。感覚が多いです。なので、あまりうまく言えないですが……」
もっと自分らしい声を求めて
――ヴォーカリストとしてのa子さんは、ウィスパー・ヴォイスやブレスの使い方が特徴的ですよね。現在の歌い方に辿り着いた経緯を教えてください。
「影響を受けたアーティストにメラニー・マルティネスを挙げさせていただいたのですが、彼女の歌い方って、当時の私にとっては衝撃的でした。わたしは自分の声が嫌いでして……。それで、〈歌い方によって変わるんじゃないか〉というのに当時気付きまして、歌い方を研究しました。最初は、メラニー・マルティネスの歌い方を真似したりして、〈自分の声質と合っていないな〉と思って、ずっとずっと考えてました。もはや、いまも考えているくらいです……。
いまは、やっとまとまってきたかな、という感じですが、まだ自分の声質が良くなる歌い方があるのでは?と思いつつ、いまだに模索しています」
――歌い方で参考にしているアーティストはいますか?
「ビリー・アイリッシュが流行る前に知っていまして。2018年に〈サマソニ〉に出演していたと思うのですが、それもあって、ずっと注目していて、〈私だけのアーティストを見つけちゃった〉みたいな感じでずっと聴いていました(笑)。いつの間にか世界で注目されて、有名になってしまいましたが(笑)。
ビリー・アイリッシュって、すごいウィスパーな歌い方じゃないですか? なので、彼女の歌い方はとても参考になりました。どういう風に歌っているんだろうと、動画を見まくっていた時期もありましたね」
――シューゲイザーから影響受けているのかと思っていました。
「もちろんシューゲイザーも聴きます! 特にメン・アイ・トラスト(Men I Trust)のエマ(・プルークス)ちゃんの歌い方は、とても参考にしていました。あと、ローズマリー・フェアウェザー(Rosemary Fairweather)というカナダのトロントで活動しているアーティストがいるんですけど、その子もかなりウィスパーな感じで、声質とかもとても良くて、少し意識して練習したことがあります」
――a子さんの音楽性は、ロックとエレクトロニック・ミュージックやヒップホップを融合していることが特徴的ですよね。ひとつのジャンルに収まりきらないようなサウンドである理由は?
「やりたいことがたくさんあるのかなと思います。自分なりに一つにまとめている気持ちではあるのですが、好きなものが多くて。〈あれもやりたいな、これもやりたいな〉とか、〈これとこれを合わせたらすごくいいんじゃない〉というのをよくやってしまうので、いろんなジャンルに聴こえるのかと思います」