年上の八木ましろが「正反対の性格なので、お互いにないものを補い合えるチーム」と言えば、妹キャラの菅まどかが〈しーちゃんが相方で本当によかったと思う〉と笑顔で応える。メディアミックス・コンテンツ「けものフレンズ2」から飛び出した声優ユニットとしてデビューしてからおよそ2年、Gothic×Luckは本当の姉妹のようにさらに仲良く、アーティストとしても着実に成長してきた。その大きな成果が、さまざまな意味を成す〈夢〉をテーマに制作されたセカンドEP『おやすみ おはよ』だ。
「今回のEPは私たち主導で、〈こう歌いたいです〉というものがあったうえでスタッフさんに助けていただいたので。細部まですごくこだわって、全力を出し切れた作品になりました」(八木)。
「それぞれの曲にストーリーがあるので、それをどうやって表現しよう?というところを大切にしました。いま私は音楽大学で歌を勉強しているんですけど、そこで学んだことも出せたと思いますし、二人とも表現力がすごく上がったと思います」(菅)。
曲調はとてもカラフル。冒頭を飾る爽快な“小さな予感”、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也によるコミカルな“ユメゴコチ進展系!”と、溌剌としたバンド・サウンドが続いたあと、しっとりと幻想的な“棘かくし”へ。〈夢〉が進行していくにつれ表現を変えてゆく、細やかな歌のスキルに注目だ。
「“小さな予感”は、最初に聴いた時に〈すごい青春っぽいな〉という印象を受けたんですよ。〈どんな自分(いま)になるのかな〉という歌詞が好きなんですけど、〈まだ見ぬ自分にすごく期待している様子を歌声に乗せたい!〉と思って、胸のなかをキラキラした青春感でいっぱいにして楽しく歌いました」(八木)。
「“ユメゴコチ進展系!”は、それぞれが楽しんでいる雰囲気を思いきり出したいなと思って、二人の会話っぽくしてみたり、あえてデコボコ感を出してます。“棘かくし”は、最初のサビはミックス・ヴォイス(地声と裏声の中間)で歌っているんですけど、ラストにかけて力強さを増しているように表現したくて、最後のサビは地声で歌ったものを採用していただきました」(菅)。
EPの後半では、“夢の中のストーリー”、新進ボカロPの瀬名航が提供した“天国の踊り場”、MVも制作された“ミチシルベ”と、徐々に切ないエモーションを増してゆく。夢の入口から目覚めまで、6曲の流れは完璧だ。
「“天国の踊り場”は切ない歌詞ですけど、ストレートな表現だからこそそれぞれに思い浮かぶ情景が違うだろうし、聴いていただいた方の思い出に寄り添える歌になればいいなと思っていて。そこからの“ミチシルベ”で、〈新しい夢に向かって走っていく〉というストーリー性が本当に素敵だなと思います」(菅)。
「今まで出会ってきたスタッフやファンの皆さんがいまのGothic×Luckを形成していると思っているので、その人たちのミチシルベに私たちがなれればいいなという気持ちと、この曲を聴いて、何かを諦めてしまった気持ちや、しまい込んでいた夢をもう一度思い出して、少しでも踏み出す勇気のお手伝いができればいいなと思って歌いました」(八木)。
通常盤のジャケは、八木が大ファンの漫画家、森下suu(“棘かくし”の作詞も担当)による美麗なイラストに包まれていることもトピックの『おやすみ おはよ』だが、さらには「CDを手に取って聴かないとわからない仕掛けがあるのでお楽しみに!」(八木)という隠された仕様も。7月からは初の全国ツアーに挑戦し、さらに「目標は東京ドーム!」と口を揃える、夢に向かってはばたく二人の姿はまさにいまが青春だ。
「これまでは〈けものフレンズ〉のファンの方が主に聴いてくださっていたんですけど、今回の目標は、〈けもフレ〉ファンの皆さんはもちろんのこと、このCDをきっかけとしてよりいろんな方々にGothic×Luckを知っていただくことなので。その第一歩としても、このCDを出せることをすごく嬉しく思っています」(菅)。
Gothic×Luck
アニメ「けものフレンズ2」に登場するカタカケフウチョウ役の八木ましろとカンザシフウチョウ役の菅まどかによる声優デュオ。2018年に舞台〈「けものフレンズ」2~ゆきふるよるのけものたち~〉に出演、2019年には「けものフレンズ2」のエンディング・テーマ“星をつなげて”でアーティスト・デビューを果たし、3月にEP『Starry Story EP』をリリース。8月にはさいたまスーパーアリーナで開催された〈Animelo Summer Live 2019 -STORY-〉へ出演。2020年は3月に配信シングル“桜てのひら”を発表し、直後に初のワンマン・ライヴを、同年末には無観客オンライン・ライヴを開催。このたび、ニューEP『おやすみ おはよ』(ビクター)を6月30日にリリース予定。