RCサクセション・忌野清志郎のデビュー50周年プロジェクト第4弾としてRCサクセション『RHAPSODY NAKED』をリマスターした『RHAPSODY NAKED Deluxe Edition』がCD 3枚組の通常盤及び3 CD+1 Blu-ray Disc+3 LP(180g重量盤)による限定盤で発売された。この作品の元になっている『RHAPSODY』は、80年4月5日の久保講堂でのライブの模様を収録したアルバムであり、日本のロック・シーンに於いてエポックメイキングとなった作品だ。

リマスターにより、大ブレイク寸前の空気感と興奮度がより立体的に臨場感を増して伝わってくる今作について、プロジェクトの発起人であり、当日も観客として会場でライブを目撃した高橋Rock Me Baby氏に話を訊いた。ファン時代を経て宣伝担当として彼らと接してきた高橋氏が考察するRCの音楽性と時代背景。これを読めば、きっとこれまでと違った角度で作品を楽しむことができるはず。

RCサクセション 『RHAPSODY NAKED Deluxe Edition』 ユニバーサル(2021)

 

ニューウェイヴ、ノーウェイヴ、ディスコ……RCサクセションの多彩な音楽性

――今回、プロジェクト第4弾にして初めて1つの作品にフォーカスしたわけですが、『RHAPSODY NAKED』を取り上げた理由を教えてもらえますか。

※編集部注 第1弾はRCサクセションの全シングルをコンパイルした『COMPLETE EPLP ~ALL TIME SINGLE COLLECTION~』、第2弾は忌野清志郎のシングルをコンパイルした『COMPILED EPLP ~ALL TIME SINGLE COLLECTION~』、第3弾はRCサクセションのオリジナル・アルバム全作のハイレゾCD(MQA-CD × UHQCD)化。いずれも2020年にリリース

「2005年に発売された『RHAPSODY NAKED』がすごく良かったので、是非新しくリマスターして発売したいなと思っていました。プロジェクト・ミーティングを重ねていき、リマスターするだけではなくて、当時の79、80年ぐらいのライブのムードを伝えたいという話になり、今回の作品になりました。僕のアイデアというよりはプロジェクト全員による企画です」

『RHAPSODY NAKED Deluxe Edition』ダイジェスト映像

――高橋さんが初めてRCのライブを観たのはいつ頃なんでしょうか。

「78年ぐらいで、春日(博文/ギター)さんがギターを弾いていたと思います。そのときはギター・バンドで、清志郎さんのヴォーカル以外はあまり印象に残りませんでした。そこから小川銀次(ギター)さんとgee2wo(キーボード)さんが入って、ニューウェイヴなムードのあるバンドになって、それがすごく新しい音楽に聴こえました。以前から知っているRCとはまったく違うバンドに思えました」

『RHAPSODY NAKED Deluxe Edition』限定盤

――それは、その当時海外から出てきた新しいアーティストたちの影響を受けてそうなっていった?

「欧米から出てきた新しいアーティストの影響があったとは思います。ただ他のバンドと決定的に違ったのは、RCサクセションには日本のバンドとしてのオリジナリティーがありました。彼らのオリジナルの音楽に、いろんなスタイルのサウンドが混ざっていたんです。それも大きく取り入れているんじゃなくて、すごくマニアックに、時にはパロディーの如く取り入れていて、それがとてもセンスがよかった」

――そういう洋楽の要素が入っているということは、高橋さんは後から気付いたんですか? それとも79年頃聴いたときに読み取れたことなんですか?

「ニューウェイヴとかニューロマンティクス的なものとか、ポスト・パンクとか、新しい音楽の要素がいっぱい入っていると、その当時から感じてました。79年~80年のRCは、エルヴィス・コステロ、ジョー・ジャクソン、グレアム・パーカー&ザ・ルーモア、ディーヴォや、パンクではダムド、ポスト・パンクのデルタ5、ノーウェイヴの(ジェイムズ・チャンス&ザ・)コントーションズ、そして『Bad Girls』(79年)のドナ・サマーetc.の同時代の王道から少し外れた洋楽のエッセンスが散りばめられた新しい音楽に感じました。ドナ・サマーとコントーションズは当時の清志郎さんのインタビューで知りました。

ジェイムズ・チャンス&ザ・コントーションズの79年作『Buy』収録曲“Contort Yourself”

ドナ・サマーの79年作『Bad Girls』収録曲“Hot Stuff”

その後、ブロウ・モンキーズやスミスを聴いたときも、RCみたいな感じがあるなと思ったり、80年代を通してRCが活動していく中で、そういう要素を感じることがいっぱいありました。イギリスのバンドが、ニューウェイヴ期からアメリカのソウル・ミュージックやジャマイカやアフリカの音楽を取り入れている感じに近く、センスがすごく良かった」