ザ・タイマーズのファーストアルバム『THE TIMERS』のリリース35周年を記念した作品集『THE TIMERS 35周年祝賀記念品』が、2024年11月13日(水)に発売された。
言わずと知れた、忌野清志郎に酷似した人物・ZERRY率いる4人組バンド、ザ・タイマーズ。今作には、大ヒット曲“デイ・ドリーム・ビリーバー”を収録したファーストアルバムの最新リマスターに始まり、神出鬼没なライブ活動で披露されていたものの日の目を見なかった幻の楽曲や既発曲の別バージョンといった秘蔵音源も収録されている。特に注目したいのが、“君はLOVE ME TENDERを聴いたか?”だ。RCサクセションのライブ盤『コブラの悩み』の最後にショートバージョンとして収録されていたこの曲が、なぜこの音源集に収録されているのか?
当時、東芝EMIの宣伝担当者として彼らと密接に関わっており、今作の制作に携わった高橋Rock Me Baby氏に、新たな視点でザ・タイマーズを語っていただいた。今だからこそわかる、曲に込められたメッセージとは。
ジョン・レノンの影響――ラブソング、プロテストソング、そしてコミックソング
――ザ・タイマーズについては、高橋さんも語り尽くした感じがあると思うんですが、今回改めて気が付いたことなどはありましたか?
「『Sometime In New York City』ってジョン・レノンのアルバムがあるじゃないですか? あれはエレファンツ・メモリーというバンドで演奏しているんですけど、そのバンドは短命に終わってるんですよ。タイマーズって、ああいう感じだったんじゃないかなと思いました。というのも、確かあのアルバムの前後にジョンがヘルメットを被ってた写真があるんです。それがモチーフだったというようなことを聞いたことがある気がするんですよ。清志郎さんはジョンの話をよくしていたし、影響は強くあったんじゃないですかね」
――政治的なことを歌おうと考えたときに、ジョンのことが結びついた?
「RCサクセションのデビュー当時からそういうことは歌っていましたけど、もう1つあるとしたら、ザ・ブロックヘッズと作った1stソロアルバム『RAZOR SHARP』(1987年)でロンドンに行って変わったんだと思います。日本だと政治のことを歌ったりすると〈シリアスになりすぎる〉とか言われていたんだけど、ブロックヘッズとレコーディングしたときに、〈別にそういうことも歌っちゃっていいんだって思った〉と言ってましたね。その思いが『RAZOR SHARP』とRCの『MARVY』にも色濃く出て、その後に『COVERS』で発売中止騒動になってしまったので、タイマーズで一気に爆発したんだと思います」
――RCは1988年に『MARVY』『COVERS』『コブラの悩み』と3枚もアルバムを出していますよね。その勢いで、後にタイマーズでやったことをRCでやろうと考えていた節はありましたか?
「清志郎さんが果たして本当のことを言っていたかどうかわからないんですけど、〈(RCでは)無理だろうなと思った〉と言ってました。まず『COVERS』のときに、〈オリジナルじゃ絶対歌えないようなことを歌おうと思った〉と言ってるんですよね。〈“サマータイム・ブルース”とか“風に吹かれて”“ラヴ・ミー・テンダー”は、RCでやると直接的すぎちゃって、ちょっと難しいんだよな〉って。だから『COVERS』は替え歌だと思ってやったそうです。そういう話をしていたときに、エレファンツ・メモリーの話がちょこっと出たんですよ。なので、やっぱりタイマーズみたいなことをRCでやるのは難しかったんだと思います。
それと、〈(政治的なことは)ユーモアがないとおもしろくない〉とも言ってました。ラブソングもプロテストソングも歌うんだけど、〈もう1つはコミックソングだよ〉とおっしゃっていたんですよね」