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スティール・ギターがなきゃ始まらない

――“In A Good Way”のメロウネスがこのアルバムのムードを表しているような気がします。ギターのフレーズやストリングスのアレンジも印象的ですが、この曲が生まれた経緯や目指していたサウンドについて教えてください。

「アルバムのなかでもかなり最初のほうに書いた曲で、そういう意味ではすんなり自分のなかから出てきた感じの曲で……。バンドで音を出してるときに、自然にそっちの方向に導いていかれたっていうか、お互いの出す音に反応しているうちに自然とそういうサウンドになっていった感じの曲なんだよね。この曲もそうだけど、色々やっていくうちに見えてくることが結構あって。

それと前回のアルバムでは使ってないんだけど、今回のアルバムでは(ギターの)ナイロン弦をたくさん使ってる。あの曲(“In A Good Way”)なんかも、ナイロン弦を使って書いた最初の曲なんだよね」

『I Know I’m Funny haha』収録曲“In A Good Way”

――“Better Distractions”では、あなたの曲に欠かせないスティール・ギターの音色が曲に浮遊感を与えています。スティール・ギターのどんなところを気に入っていますか?

「何だろうなあ……。それこそ、生まれたときからずっとスティール・ギターの音を聴いて育ってるし、子供の頃から身近にあったから。家で普通にそういう音楽がかかってたり、両親とも古いカントリー・ウエスタンが好きだったり、もう理由とか理屈抜きで好きなの。今回のアルバムの曲をレコーディングするときにも、スティール・ギターがなきゃ始まらない、みたいな」

『I Know I’m Funny haha』収録曲“Better Distractions”

――あなたはカントリー・ミュージックを演奏する一家に生まれたそうですね。

「そうそう、祖父がギターを弾いてて、兄もバンドをやってたりして。プロとかで本格的にやってるわけじゃないし、基本趣味なんだけど、家族全員かなり熱心なカントリー好きなんだよね」

――カントリー・ミュージックからはどんな影響を受けましたか?

「確実に影響は受けてると思うけど、それって潜在意識のレベルで表れるものだと思うんだよね。小さいときからずっと聴いてて染みついてる、みたいな。それで自分で音楽を作るときにも自然とそういうのが出ちゃってるんだろうし、子供の頃からカントリー・ミュージックの演奏を観たり聴いたりしてたんで、それが自分が音楽を作る上でもデフォルトとして組み込まれてるんだろうね。もちろん、そこから時間をかけて自分なりの表現にしてきたんだけど、確実に自分が一番影響を受けた音楽の1つではあるよ」

――カントリー以外には他にはどんな音楽に影響を受けましたか?

「あまりにも好きなアーティストが多すぎて、改めて考えるとわからなくなるんだよなあ……。ただ、確実に影響を受けてるのはフォーク・ロック的な音楽。それこそコートニー・バネットとかには、一時期、相当ハマってたし。

ただ、同時にポップ・ミュージックにハマってた時期もあれば、R&Bのアーティストに夢中になってた時期もあるし、色んなものがちょっとずつ蓄積されて自分がいまやってる音楽になってるって感じ」

 

mei eharaは私にとって本当に大切で重要なアーティスト

――“Overslept”では、日本人のシンガー・ソングライター、mei eharaがヴォーカルでフィーチャーされています。彼女と共演することになった経緯を教えてください。

「もう完全にただのファンってやつ。彼女のことを知って、彼女の作ってる音楽に完全に取り憑かれちゃって。

それで今度のアルバムで誰と共演したいかなって考えたときに、真っ先に彼女のことが思い浮かんだの。単なる思いつきからじゃなくて、本当に心から……。ここ何年か自分が彼女の音楽にどれだけインスパイアされてきたかを考えたら、今回、外からゲストを呼ぶならこの人しかいないって感じで。だからもう、完全に個人的な理由で……。

私自身にとって本当に大切で重要なアーティストだったから。この2年間なんて他の誰よりも彼女の曲を何度も何度も繰り返し聴いてたくらいで、それこそ運命の出会いみたいなものを感じてたから」

『I Know I’m Funny haha』収録曲“Overslept (Feat. mei ehara)”。mei eharaは日本語のヴォーカルで参加している

――ものすごい心酔ぶりですね。彼女の音楽のどんなところに惹かれますか?

「ハハハ。私が彼女の音楽を好きなのは、サウンド的に近いというか、似たような土俵でやっているんだけど、お互いにアプローチが全然違うからなんだよね。わりと似たようなリソースを使って音楽を作ってるはずなのに、仕上がりが全然違ってて、そこがすごいなあって尊敬するし、私にはものすごく魅力的に映るんだよね」

mei eharaの2020年のシングル“昼間から夜”

――彼女とはどんな風にコラボレートしたのでしょうか。

「普通にメールとかチャットでやりとりしながら、とか。アルバムに参加してもらうオファーをする前から、しょっちゅうメールでやりとりしてたんだよね。おすすめの曲を紹介したりとか、プレイリストを共有したりとか、なんとなく思いついたときに。その流れで今回のアルバムにも参加してもらうよう、こちらからお願いして……。

私が送った音源に対して、新しい音をつけて返してくれたんだけど、最初に聴いた瞬間から完璧すぎて〈もうこれ以上いじりたくない〉って思って(笑)。あまりにも理想通りで、余計なものを一切付け足したくないと思ったのね。最初から〈はい、一発OKもらいました、ありがとうございます!〉みたいな感じ(笑)」