米アトランタ出身のシンガー・ソングライター、フェイ・ウェブスターが6月にリリースした新作『I Know I’m Funny haha』は、Pitchrforkが〈Best New Music〉に選ぶなど、すでに高い評価を受けている。出世作になったサード・アルバム『Atlanta Millionaires Club』(2019年)からぐっと深化や洗練を経た本作は、2021年のインディー・ロックを代表する傑作との呼び声も高い。
今回は、そんなフェイ・ウェブスターに、コロナ禍で変化を強いられたレコーディング、ルーツであるカントリー、本作に参加した日本のシンガー・ソングライターmei eharaへの愛と尊敬、地元アトランタのヒップホップ・シーンとの関係などについて、たっぷりと語ってもらった。自然体でくだけた話しぶりには、彼女の飾らない生き方と直結した表現の秘密が表れているように感じる。 *Mikiki編集部
FAYE WEBSTER 『I Know I’m Funny haha』 Secretly Canadian/BIG NOTHING(2021)
たった1人、家で録音したヴォーカル
――今回のアルバムのレコーディングに入ってすぐロックダウンになったそうですね。自宅で1人で吹き込んだ曲もあるそうですが、レコーディングはどんな風に進められたのでしょう。
「いままでとはだいぶ勝手が違ってたよね。もともとスタジオに行って、バンドと一緒にレコーディングするのに慣れてたし。しかも、あらかじめスタジオを何日か抑えてとかじゃなく、自分の気が向いたときに、フラッと自分のタイミングで行くことに。
ただ、今回コロナ禍の中でそれやるのはあまりにもリスクが高すぎたから、曲を書き溜めて全部まとめてレコーディングするって形を取ってて。だから、いままでとは全然違う。慣れないし、おかしな感じで……。ただ、良い経験にはなったけどね」
――ちなみに自宅でレコーディングしたのはどの曲ですか?
「今回、ヴォーカルは全部自宅で自分1人で録ってるから、基本、全曲自宅に持ち帰って、最終的に仕上げてる形にはなるんだけど、ラストの“Half Of Me”は、最初から最後まで全部自宅でレコーディングしてるんだよね」
――自宅でのレコーディングはどうでしたか?
「自宅でレコーディングするのも好きかもしれないと思った。もともとヴォーカルに関しては自宅で1人で録音しようって決めてたのね。そのほうがリラックスして落ち着いて歌えると思ったから。ただ、いったん曲が形になり始めてからは、最終的には家で1人で仕上げたいかもって気持ちだったんだよね」
――今回のアルバムは、前作に比べて穏やかで落ち着いた雰囲気が漂っているような気がしました。現在パートナーと一緒に暮らしているそうですが、そうした環境の変化がアルバムに反映されていると思いますか?
「そうなんだよね。前よりも希望が感じられるというか。曲を書きながら、書いてる内容があきらかに前回とは違うっていうのを自分でも感じてたし……。それはいままさに言ったように、いままでとは違う環境に身を置いてるからで、いまのほうが幸せなんだよね。それがアルバムの曲にもそのまんま反映されてるっていう」