曲が曲だけに鍵盤(ピアノ、オルガン)の名演や様々な編曲ヴァージョンが存在するが、今回のアコーディオン、バス・ヴィオール、ヴァイオリン3つの楽器による演奏は中々の曲者だ。通常であればヴァイオリンが主旋律を……となるのだろうが、聴き進めて行くと主役が曲ごとに替わってゆく。反行フーガでは曲中にもユニゾンや入れ替えが起こり曲想がさらに膨らんで、聴き手を混沌と興奮の世界へ連れ込もうとする。ただ曲に合わせてしまうのではなく曲ごとにメインの楽器を入れ替えてゆく事で聴き手を飽きさせない工夫はもちろん、これまで気が付かなかった対立の美しさを引き出した物凄い演奏だ。
レザンアッタンデュ(Les Inattendus)『J.S.バッハ:フーガの技法』ユニークな編成の三重奏で混沌と興奮へ誘う
