野球を愛する音楽家二人が偶然出会った
USインディーのシンガーソングライター・デュオ、ハウディ。彼らが4作目のアルバム『True Love』をリリースした。アルバムリリースに先立ち7月に解禁された最初の楽曲は、アルバム表題曲ともなっている“True Love”だったが、その出音一番から感じるのは、心に美しい花が咲き乱れるような多幸感。曲のフィナーレに向かって心地よいファルセットとフォークサウンドが双方の強度をゆっくりと上げながら混ざり合い、高揚感へと到達する。至福が反芻されるような、優しくも中毒的なそのサウンドスケープにアルバムへの期待感が一気に高まったリスナーも多いであろう。
HOVVDY 『True Love』 Grand Jury Music／Tugboat（2021）
Hovvdyと書いてハウディと読む。カナダのオールウェイズ（Alvvays）同様に〈v〉を二つ重ねることで〈w〉と読ませているが、Howdyとは〈How do you do?〉を省略したテキサス州のスラングである（カウボーイが使うようになったのが発祥だとか）。インターネット上の検索結果に埋もれないためのアイデアを含めつつ、彼らの地元テキサスへの親しみを示すアーティスト名とも受け取れるが、そんなデュオの出自を改めて確認しよう。
ハウディはウィル・テイラーとチャーリー・マーティンによるデュオ。前述のとおりテキサス州のオースティンを拠点に活動している。元々はお互い別バンドのドラマーとして活動していたが、それぞれのツアー中に訪れたデンバーでのコロラド・ロッキーズの試合で、二人は偶然にも出会った。なお、今回の“True Love”のミュージックビデオもボールパークで撮影していたり、過去作の楽曲でも野球に関連したリリックが何度も登場していたりするように、野球は彼らのパーソナリティーを形成する上で重要なファクターとなったスポーツのようだ。
スポーツ中心の生い立ちだったという共通項もあってか二人は意気投合し、お互いがソロ用に温めていた楽曲を持ち寄りながらハウディとして本格的な活動をスタートさせる。2014年の出会いからすぐに楽曲制作に取り組むと、2014年、2015年と立て続けにEPを発表。そして、2016年には初めてのフルアルバム『Taster』をリリース。2018年には『Cranberry』、2019年には『Heavy Lifter』とコンスタントにアルバムをリリースしている。
オリジナルアルバムの他にもカバー集を2作発表している。一枚は、同じくテキサス州を拠点に活動するフォークシンガーのロメルダとお互いの楽曲をカバーしあった2019年のコラボ作品『Covers』。そして、もう一枚は2021年の1月にリリースした『Covers 2』。こちらはコールドプレイ、チャーリーXCX、パラモア、フル・フルの楽曲という意外なセレクトとなっている。
