海外と北陸への想い
――ちなみに、CDの特典音源として両バンドの共作曲を制作中とのことですが、進行はいかがですか?
森本「お互いの意見を取り入れながら、一曲ずつ作ってるんです」
為井「僕らはリズムをRoleに投げて、逆に僕らはRoleからメロディーをもらったんですけど……メロディーが入ると途端に難しくなっちゃうんですよ。淡々と聴かせたいのに、盛り上がっちゃうじゃないですか(笑)。メロディーがあるとリズムもある程度は一定になるので、そこも難しくて。いま15分くらいになっちゃってるんですけど……今年中にはなんとか完成させたいです」
――あと、弁慶と義経のアートワークが両バンドの個性をよく表していて、インパクトもありますが、これは海外を意識したビジュアルでもあるそうですね。
森本「Roleの最初のEP『Heretics EP』(2015年)はアメリカのレーベルからカセットでリリースされているんですけど、そのときに海外にも日本のバンドを好きなリスナーがたくさんいることを知りました。いつか実際にバンドで行ってみたいという想いはずっとあります。ただ単発で行っても小さく終わってしまうので、海外で注目されるには欧米のバンドと明確に違うところを音楽やアートワークで示すのが重要かなと感じています」
――現在はコロナの影響で海外ライブは難しいですけど、かつてに比べればハードルは下がってますよね。ポストロックやハードコアは欧米やアジアにもシーンがあるし、Roleは2019年に〈After Hours〉に出演していますが、あのフェスの主催バンドたちが切り開いてきた道もあるので、十分現実的な目標だと思います。
為井「僕はdownyとかMONOとかenvyに心酔してるところがあるし、少し前は海外に住んでいたので、現地のべニューやフェスとかにも行って、あの人たちはこういうところに出てたのかと思うと、ホントにすごいなと感じていました。
あと、この前“NEUS”のミュージックビデオを公開したんですけど、コメントが英語ばっかりで、少しでも可能性があるなら、挑戦しない手はないなと思いました。Roleに海外志向があることは知ってたので、ドイツにいたときにライブ会場でRoleのCDを配ってたんですけど、いい反応があったりもしたから、今後は外向けにもいろいろやっていきたいと思っています」
――住んでいたのはドイツなんですね。Oavetteの音楽性的にも納得です(笑)。
為井「デュッセルドルフに住んでいました。クラウトロックやドイツのポストロック、ポストクラシカルの聖地みたいなところなので、いろんなアーティストが来ていましたね。すぐそこでステファン・シュナイダーやハウシュカがライブしてる、みたいな感じで。今回の制作も最初から最後までドイツにいたので、かなり影響を受けてしまったと思います(笑)」
――では最後に、スプリットのリリース元であるTOKEI RECORDSがそれぞれにとってどんな存在かを教えていただけますか?
森本「ホントに優しいレーベルだと思います(笑)。TOKEIのアーティストのラインナップを見ると、〈僕らを出すのはヘンだろう〉って思うんですけど、それでもこうやって受け入れてくれて、すごく感謝してます。レーベルとしても酒蔵でイベントをやったり、いつも発想がおもしろいし、いろんな人を巻き込んでいく力があるので、イベントに行くといつも楽しいんですよね」
為井「僕は富山の出身で、高校生くらいからコウイチさんのことは何となく知っていて、大学生になってバンドを始めてからは対バンをしたりするようになり、ずっと兄貴みたいな感じというか。なので、TOKEIからリリースするのは目標だったんですけど、今となってはTOKEIから出すのが当たり前というか、ずっとコウイチさんの傘の下でやってる感じもあります。僕はTOKEI周りの人たちに育ててもらった感もあるので、〈次は僕らの世代で〉と思ってるところもありますね」