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アメリカーナとは、ルーツが全部ミックスされたジャンル分けできない音楽

――音楽的にはどんな作品にしたいと考えたのでしょうか?

「アメリカーナと呼ばれるものがすごく好きなんです。アメリカーナの定義っていろいろあると思うんですけど、私なりに考えているのが、ルーツミュージックが全部ミックスされた、ジャンルの分断がない新しい音楽なんです。そこに今までロカビリーの世界でやってきた自分も入れこんだものを作りたいと思いました」

――ロカビリーとカントリーを中心に、さまざまなルーツミュージックの要素が混ざりあった『OUTSIDER』は、まさにアメリカーナな作品になっていると思います。堀口さんがアメリカーナに興味を持ったきっかけは、ロカビリーのルーツを遡ったことだったんですか?

「きっかけはニーコ・ケイスに出会ったことでした。ロカビリーの先輩が〈これ、好きなんだ〉って教えてくれたんです。ニーコ・ケイスを入口に、いろいろアメリカーナと呼ばれるアーティストの新譜を聴くようになったんですよ」

――どんなところに魅力を感じたんですか?

「それまで私は1950年代のものから現行のものまでロカビリーを中心に聴いていたんです。ロカビリーって、リズムは跳ねてなきゃいけないとか、ウッドベースじゃなきゃいけないとか、いろいろ決まりごとがある、ある意味、様式美の世界なんですけど、そういう決まりごととはまったく関係ないものに出会えたというか。ニーコ・ケイスの音楽から、そういう自由さをすごく感じたんです」

――THE WOLF BAITSでもアメリカーナと言えるアプローチに取り組んでいましたね。

「学びの途中でしたね(笑)。でも、THE WOLF BAITSのときは3ピースだったし、何かロカビリーっぽいことをやらなきゃいけないんじゃないかという意識はありました。お客さんもそういうものを求めていたと思うし、3ピースってなると、3人全員がメインって私は思っちゃっていて。だから、今回、4ピースになれてすごくよかったです」

 

ペダルスティールの音色が『OUTSIDER』の要

――Desperado Gentlemenと名づけられた3人の凄腕ミュージシャンたちは、今回、ソロアルバムを作るために集めたのでしょうか。それともライブをするために集めて、それがレコーディングに発展したのでしょうか?

「ライブもお願いしているんですけど、ソロアルバムを作るならこの人たちだと思っていました」

――3人とはどんなふうに出会ったんですか?

「THE WOLF BAITSが活動休止して、1人になった時に最初に誘ったのがウッドベースの北島くんで、彼は10年以上前から友達なんです。一番やりやすいという理由で誘いました。中村くんはTHE NEATBEATSのドラマーなんですけど、THE NEATBEATSとはLEARNERSでもよく対バンしているし、台湾ツアーも一緒に行ったし、THE WOLF BAITSのアルバムも(THE NEAT BEATSのMR.PANこと)真鍋(崇)さんに録ってもらっていたし、何かとお世話になっているので、その繋がりでお願いしました」

――そして、最後にペダルスティールの宮下広輔さんに声をかけた、と。

「宮下さんは対バンで出会ったんですけど、初めて出会った時に〈この人、絶対に一緒にやりたい!〉と思いました。前々から自分の音楽にはペダルスティールを入れたいと思っていたんですけど、宮下さんは他のペダルスティールプレイヤーと違って、ニッキー・レーンとか、アメリカン・アクアリウムとか、そういうアプローチができる人だと思って。ちょっとサイケデリックと言うか、宮下さんはグレイトフル・デッドが好きなんですけど、いくらギャラを払ってもいいから一緒にやりたいと思って、めっちゃ口説きました。宮下さんが今回のソロアルバムのサウンドの要なんです」

――確かに堀口さんと宮下さんの、ほぼツインリードと言えるギターアンサンブルは大きな聴きどころだと思います。

「それをやりたかったんです。歌もののバックで、ふぁ~ってスティール・ギターが入っている曲もあるんですけど、宮下さんはロックなアプローチで攻めることもできるから、バンドっぽいサウンドでやりたかったんです」

――インストの“Roadrunner”、“Teana”を含めた今回の13曲は、いろいろな時期に書かれたものだそうですが、どんなふうに選んだのでしょうか?

「ペダルスティールの音色が映える曲がいいなと思いました。宮下さんと出会ってからは、それありきで曲を作っているんです。ペダルスティールが入っていないと、アメリカーナなサウンドにならないような気がするんですよ」

――それぞれに趣向を凝らした多彩な曲調は、堀口さんが曲を作った時には、もうイメージしていたんですか?

「デモの段階で、これはウェイロン・ジェニングスみたいにやりたいとか、これはジェイミー・ワイアットみたいにやりたいとか、1曲ずつゴールを決めてました」